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研修会&講座のお知らせ

平成25年度 第9回学術講習会2014.03.09

日時:平成26年3月9日(日)
平成25年度 第9回学術講習会  
主催:(公社)大阪府鍼灸師会  会場:大阪府鍼灸師会館 3階           

報告①:「脊柱管狭窄症について」
講師:国立病院機構 大阪医療センター 整形外科  青野 博之 先生
 腰痛の原因の7~8割は原因がはっきりしない非特異的腰痛である。筋肉・筋膜、椎間関節、椎間板のいずれかに由来した痛みと特定できたとしても、整形外科では治療法に大きく変わりはない。
 非特異的腰痛に関しては、痛みの許す範囲内で動くほうが早くよくなり長引きにくい。
 腰痛になる危険因子として、精神的ストレスが腰痛の慢性化にも大きく関与、運動不足、喫煙などがある。
腰痛の原因が明らかに出来る15%の腰痛を見逃さないことが重要である。脊椎由来の腫瘍、感染症、外傷(圧迫骨折)など、脊椎以外が原因の腰痛として内臓由来の、泌尿器疾患、産婦人科疾患、消化器疾患。
 脊椎疾患の合併を疑うべき危険信号として、安静時にも続く痛み、癌、ステロイド治療の既往(骨が脆くなるため骨折の疑い)、発熱、下肢麻痺などがあり、腰だけでなく下肢に放散する痛みや麻痺を伴う場合は、早めに病院に受診すべき腰痛である。
 脊柱管狭窄症とは、背骨のトンネルである脊柱管が狭くなり、内部の神経障害が出た状態をいう。坐骨神経痛は、椎間板の膨隆や椎体後縁の骨棘、狭くなった椎間孔、黄色靭帯の肥厚、椎間関節の変形性変化・骨棘神経圧迫などによっておこる根性痛である。
 腰部脊椎管狭窄症の症状は、下肢の痛み、しびれ、間欠性跛行であるが、いずれも腰部脊柱管狭窄症だけに特有の症状ではない。
 神経根症状は神経支配に一致する領域のしびれや痛み、筋力低下(脱力)、馬尾症状は両下肢、会陰部の異常知覚や膀胱直腸障害。間欠性跛行は安静時にはほとんど症状はなく、腰痛はあまり強くない。進行すると下肢麻痺、膀胱直腸障害が出現する事もある。 
 間欠性跛行の分類には、血流性と、神経根性のものとがある。鑑別ポイントは、神経根性では前屈姿勢をとることで速やかに回復する、立位保持で症状が出現するなどがあり、血流性は足背動脈の拍動に触れないなどがある。
 腰部脊柱管狭窄症の保存療法では、安静を医学的治療として指示しないように、可能な限りいつも通りの日常生活に復帰してもらう。
 高度な麻痺あるいは進行性の下肢麻痺、重度の筋力低下、下垂足などや膀胱直腸障害、少なくとも4~6週間の保存療法に抵抗する下肢のしびれ・痛み、日常生活に支障をおよぼす間欠性跛行(100~200メートル以下)の症状がある場合、手術が適応になる。
 骨のトンネルである脊柱管が狭くなる病態であり、加齢変化で防ぎようがない。頸部脊髄性を引き起こす疾患として、頸椎症性脊髄症、頸椎後縦靭帯骨化症がある。
 質疑応答では、受講者からの活発な質問に対して、青野先生にはひとつずつ的確に、お答えいただけました。 (研修委員会 委員 近藤 輝明)
          
報告②: 「脊柱管狭窄症に対する鍼灸治療について-基礎的・臨床的データを交えて-」
講師:明治国際医療大学 鍼灸学部 准教授 井上 基浩 先生
 脊柱管狭窄症に対する鍼治療を症状の程度により三段階に分けている。
-第一段階の選択治療法-(4種をとりあげた)
1.傍脊柱部刺鍼(ツボでいうと膀胱経一行線の兪穴)
 障害部位に関連した反応部(主に緊張、硬結)を触診により確定し、反応の深度も考慮し
ながら刺入。正確に得気又は手ごたえを得れば雀琢はいらない。
2.椎間関節部刺鍼(ツボでいうと奇穴の夾脊穴)
 棘突起の間から外方へ約2cm。椎間関節部に当てる感じでよい(関節包があり知覚神経
が密集している)。
3.障害末梢神経走行部刺鍼
 下肢症状が出現している場所がわかればその部位を神経支配している、より中枢寄りにその神経が走行している部位へ刺鍼する。症状が重ければ直接神経に当てるように刺鍼する。
4.腸腰筋刺鍼
 仰臥位。鼠径部、スパルカ三角部で動脈拍動部の外方部。刺入直刺で3cm値まで。
 特に高齢者の慢性腰痛症の患者は、前傾姿勢を取るため腰椎の前弯がなくなり腸腰筋を短
縮し、なおかつ緊張・拘縮を起こしている。L1~L4の神経根障害の症状を起こしている
ためこの部への刺鍼により筋緊張を緩めることで腰下肢の症状を和らげる。
-第二段階の選択治療法-
(1)陰部神経鍼通電療法(ツボでいうと会陽穴の外4cmのあたり)
 3寸の鍼で深さ6~7cm。得気はパチンッとした感覚で、肛門付近に感じるより、
陰部に感じる方がより効果的。同じ所に2本刺鍼。陰部神経(直径2mm)にしっかり当た
るまで。10~20Hzで10分間通電。このHz帯が血流改善に非常に有効で、一般的鍼治療よ
り効果は高いことがデータから分かっている。泌尿器疾患の過活動膀胱にも効果がある。
(2)神経根鍼通電療法
 X線画像を診ながら鍼を7cm程の深さで神経根に当てて、やはり10~20Hzで10分通
電する刺鍼法。手術適応の重症の患者向けの治療法であり、X線を使用するので一般的治
療法ではないが、治療効果は非常に優れており治効時間も長く、10年再発していない例も
あるという。
-第三段階の選択治療法-
【末梢神経の再生を必要とする高度の障害】---試行的段階末消神経陰極性直流通電療法と
いう特殊治療が試みられている。断裂した神経線維を、陰極(-)の直流電気を流すことで
末端の神経細胞の再生を促進させることができるという。鍼治療の可能性を感じる。
〇「腰痛症に対する鍼治療と局麻注射(麻酔)の鎮痛効果の比較」
 鍼治療の方が相対評価は高い。鍼治療と局麻注射は刺すまでは同じ刺激療法である。麻酔
薬を注入した時点で一時的な限局性の疼痛抑制はできるが、疼痛抑制の神経伝導路までも遮
断してしまうため、刺激療法による疼痛抑制効果が薄れることによる。
 再度お聴きしたい講演であった。         (研修委員会 委員 賀来 祥克)