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研修会&講座のお知らせ

平成26年度 第8回学術講習会報告2014.12.01

平成26年11月2日(日)
平成26年度 第8回学術講習会
主催:(公社)大阪府鍼灸師会 
共催:(公社)日本鍼灸師会
会場:明治東洋医学院専門学校

講演①「頚椎・上肢の痛みとしびれ」
     講師: 医療法人さくら会  さくら会病院副院長
         大阪臨床整形外科医会(整形外科専門医) 
 松村 文典 先生

 「頚椎・上肢の痛みと痺れ」について、 頚椎(脊椎)の解剖学的な形
態の把握を図を用いて、詳しく説明いただきました。成人の脊髄は第一
腰椎下端までしかなく、脊髄と脳のみが中枢神経の支配であり、その後
は馬尾となり末梢神経支配になるということでした。脊柱管の(椎孔)
の中に脊髄が、椎間孔から神経根が走っていることから、臨床では、脊
髄症状と神経根症状の鑑別が重要になります。
 神経根症状は、皮膚分節(デルマトーム)の障害神経根の支配領域に
一致した症状を呈し、疼痛・知覚障害・筋力低下・筋萎縮と上肢症状が
出現します。 
 脊髄症状は、障害部位以下の痙性麻痺を呈し、上肢症状(しびれ・手
指の動き方)・体幹および下肢症状(体幹のふらつき・痙性歩行)・排
尿排便の障害が出現します。
 基本的な解剖と所見および頚椎疾患について症状と原因、その治療法
として、保存的治療(装具療法・理学療法・薬物療法・注射療法)と手
術的治療(前方法と後方法=除圧・固定術(桐田―宮崎法)について詳
細に説明を頂きました。代表的な頚椎疾患として、頚椎椎間板ヘルニア、
頚椎症(変形性)、頚椎脊柱管狭窄症、頚椎靭帯骨化症(後縦靭帯
ある
いは黄色靭帯)の4つがあげられました。
 最後に「接骨院で脊髄障害をきたした症例」について検査画像を踏ま
えて報告いただきました。55歳男性、接骨院で首をひねられた後から症
状が悪化し、介助歩行必要となり、四肢不全麻痺として来院。
画像診断により環軸椎(環椎と軸椎歯突起骨)の不安定性と後縦靭帯骨
化症の併発による脊髄障害と診断。ハローベスト固定法により、歩行・
食事も自力でできるまでに改善した症例でした。
 私たち鍼灸師は、画像による診断ができないので、鍼灸の適応か否か
を判断するために、徒手検査を欠かすことはできません。特に脊髄症状
は歩行状態に留意して、症状の経過を追いながら、治療を施しています。
 しかし、今回の症例で示された様に、まだまだ、医師と鍼灸師との距
離間を感じましたことと、鍼灸の適応を的確に判断し、医師との連携を
強めることが、鍼灸の地位向上にも、医師・患者への信頼につながる一
歩になると確信しました。     (研修委員会委員 思川 裕子)

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講演②「運動器系疾患の全体調整 ~督脈の意義とその治療の実際~」
    講師:日本伝統鍼灸学会 学術部長 
          蓬治療所  所長 
                                         戸ヶ崎 正雄 先生

 戸ヶ崎先生は、身体の中心にある任脈と督脈の重要性に着目し、任脈・
督脈に対する治療を本治とする任督中心療法を創始され、本治法の
考え
方と標本概念とを結び付けて、全体治療(調整)と部分治療(調整)
と称
して治療を行われています。
 いつもにこやかな温かい先生です。好評だった昨年に続き今年度も講
演と棒灸による実技をしていただきました。

【経絡治療から任督中心療法】
 経絡治療にある、心身のアンバランスを先補後瀉の原則で整えるとい
う考え方は本治法の優れた面である。しかし、病の程度、病の原因、病
気の種類等によっては、四肢の陰経を補う陰主陽従の治療原則だけでは
不十分である。
 運動器系疾患であれば、身体の上下、左右、前後の不均衡を調整する
必要があり、また、陽の部位を補う治療が効果的である。内臓疾患であ
れば体幹部の背腰殿部や胸腹部から補う治療が効果的である。病因や病
気の程度により補法をする治療対象部位の優先順位は変わる。

【任督中心療法】
 督脈は、身体不均衡、陽経(>陰経)の経絡不調和、内臓の不調と不
調和の調整と真気の補充が可能である。また、任脈は、陰経(>陽経)
の経絡不調和、内臓機能の不調と不調和の調整と真気の補充が可能であ
る。

【督脈による全体治療(調整)】
 身体の不均衡は、生来の姿勢動作の癖や仕事などによる姿勢動作の継
続によって起こり、それが身体各部に歪みを生じる。その歪みは大きく
前後のアンバランスと左右のアンバランスに分けられる。前者はさら
に、上下タイプ・前後タイプに分かれ、後者は、左右タイプ・捻じれタ
イプに分けられる。しかし、典型的なものは少なく実際にはいくつかの
体癖が組み合わさった不均衡状態の人が多い。また、内臓系の影響が加
わることにより異常反応の出方はさらに複雑になる。(野口晴哉著『体
癖1・2』 全生者刊 参考)
~督脈による身体不均衡、経脈不調和の調整~
 腰部4点(懸枢・命門・下命門・上仙)の内どれかに正気の不(虚)
あるとき、肩甲間部の3点にも虚が同時に出ることが多い
 第2・3胸椎間(上身柱)
 第3・4胸椎間(身柱)
 第4・5胸椎間(下身柱<巨闕兪>)
腰部4点と肩甲間部3点の各1点を治療することにより、身体の不均衡の
調整、経脈の不調和が調整でき、主訴やその他の症状の消失、緩解が起
こる。
※主として棒灸を行う。温補を必要としない段階・温補で症状悪化の可
  能性があるときは透熱灸、金鍼、銀鍼による補鍼や留置鍼等を行う。
 運動器系疾患の多くは、体表の陽の部位に発症することが多く、時間
の経過で体表の陰の部位、さらには体内(内臓)に波及する。この疾患
の初期から中期までは、陽経(陽経筋)が重要となる。督脈による全体
調整が適切である。生命力が極度に落ちているときは、任脈上(神厥か
ら関元周囲)を中心として出る、真(精)気の不足(虚)を先に治療す
る。               (研修委員会委員 金田 暁美)