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研修会&講座のお知らせ

平成27年度 第1回学術講習会2015.05.17

●日 時:平成27年4月12日(日) 13:30〜16:45
●会 場:森ノ宮医療学園専門学校 本校舎 6階
●主 催:(公社)大阪府鍼灸師会

講演①:「鍼灸臨床に活かす古典」
                   講師:日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生

 長らく当会「素問勉強会」で講師を務められている篠原先生をお招きし、現在「医道の日
本」
で篠原先生が連載されている「臨床に活かす古典」から、臨床と古典をどう結び付けて
いけ
ば良いのかを講義して頂きました。

古典的な鍼灸とは何か?
 まず土台として①体内のシステムが身体を動かし、また病の基盤となっている②体外の現
れから体内のことをイメージする(気の医学)③病理的なもの(病機、病因など)と病症状
(症状、脈状など)からイメージを再構成させていく④再構成に必要な因子はすべて陰陽五
行の関係づけの中に置かれている⑤生理的なシステムや病症状は固定されているものではな
く、すべて変化(時間的な変遷)していく。
 このような基礎の上に成り立つのが古典的な鍼灸医学=経絡治療(十二経の虚実を補瀉)
である。しかし実際には四陰経の虚証(あるいは心包経を含む五陰経)を運用し、選穴など
も固定化せざるを得ないものとなってしまった。そこで、病態像をもっと豊かに立体的で動
的に診るために古典が活かされてくる。ここでは臨床に活かすための指標を3つ挙げて頂い
た。
 ① 病症:病のしるし(きざし)。全身的あるいは抽象的なものと、より部分的で症状に
  近いものとがあり、病機と病因から構成される。
 ② 病機:病の機序。
 ③ 逆順:陰陽・五行・体型や病態などの常態と、それと相反した異状や予後の良否。臨
  床においては、病がねじれているか否か。
これで全てというわけではないが、本来の鍼灸医学を行なおうとすれば複雑かつ不可視なも
のを再構成し、展開していかなければならない。そのために古典が重要である。
 古典というと、どうしても難解な部分が多く理解できないとあきらめてしまう。それは古
典文献の内容が、時間的・空間的に矛盾した全体であるからで、そのまま臨床に応用するに
は不十分だからである。そのまま現在に当てはめるのではなく、時間的変遷の中で捉え、古
典と臨床の間に時空をつなぐ橋を架けてあげることが臨床に活かす道である。
 今後も連載が続く「臨床に活かす古典」を古典と臨床の“架け橋”として読んでみてはいかが
でしょうか。                      (研修委員会委員 荒木 善行)

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講演②:「街の臨床家による、特殊鍼法の紹介」
◯ 得本 誠 先生・遊心流鍼法
 一発鍼法(合田康平)の紹介がありました。これは、合谷穴の硬穴を同側の曲池穴の刺鍼
(寸3-1番)により軽減させる鍼法で、鍼灸を受けてみたいと入口まで来ている方に驚き
・感動・関心を与え、鍼灸の効果を知ってもらい、鍼灸治療の導入として用いられています。
小学6年生や中学生の職業体験で生徒たちに体験してもらい、未来の鍼灸師の普及にも尽力
されているそうです。
 次に小野寺臀部圧痛点の中臀筋への鍼法をご披露頂きました。2寸-10番鍼で雀啄をし、
強度の刺激により、疼痛の改善を図るものでした。「今日は歩きづらくなるが、明日の夕方
から軽くなる」と被験者の方も治療後はやや違和感を覚えていました。

◯ 桜井 むら子 先生・一経穴鍉鍼療法
 独自の脈法から脈所見を古典に照らし合わせ、治療評価を『脈の柔らかさと気・血・水の
動き』に注目し、治療を組み立て、針の材質の創意工夫により編み出された治療法です。
 三焦の治療が岡本一抱著『医学切要指南』に符合し、「先天の元気の腎間の陽気はそのま
までは生気は化さず、その別使である相火三焦の気が働いて腎間の動気として全身を循り、
同じ相火心包との心腎陰陽昇降の交わる中焦の部で後天の元気が加わって五臓六腑が働き、
人身は生化します。三焦は正常時には見つけられず、発動した時初めて陽気があるとわかり
ます。三焦が正常なら全身も正常で平安であり、和していなければ、諸邪がこれを犯し、諸
病が生じます。人身の要は三焦で、三焦の相火を本とした治療を組み立てて、〈根っこ〉の
治療」と解説しています。
 鍼療法の用具として、黄色の円形(直径2㎝ぐらい)色紙を10枚重ね合わせたものとトナ
カイの角の先端が丸い部分を鍉鍼に応用します。
 検脈は六部定位の関上部でおこない、色紙は脈間内の中央部で、トナカイの角は皮膚表面
から皮毛部の範囲で脈の剛柔を診ます。
 実技披露では、被験者を仰臥位にて舌診・腹診・顔面と足部の寒熱を観察し、頚肩部から
背中に手を差し入れ背候診を行い、左右の手の合谷穴あたりに黄色紙を当て脈が柔らかくな
る方又は左右の脈の流れが悪い方を治療側にとる巨刺法。三焦経の原穴である陽池穴の取穴
は脈状の柔かさから厳密に位置を決定し、取穴している指上の穴から約15㎜の距離にトナカ
イの角の鍼先を当て、その部を空いた指で覆い補法で抜鍼して脈気の調整をしました。
 終了時にだ液分泌状態や施術前の所見の改善の程度の確認を行いました。患者様から喜び
と大きな期待を受けられている療法で、施術手段によって鍼の材質の検討や非接触による鍉
鍼法の可能性など今後の課題でもあると、とても研究熱心なお姿に感動しました。

◯ 小橋 正枝 先生・小山曲泉流掃骨鍼法
 先生は日本の鍼灸を「撫で擦る小児科的な“優”から、病巣を解きしきる“剛”まで」と捉え、
後者の立ち位置で一躍を担っておられ、≪筋膜性疼痛症候群(MPS)研究会 鍼灸部会≫の
会員として活動されています。その中で医師による鍼灸針と注射針による掃骨法の紹介があ
り、現在「痛い所に痛み止め」で一時的な麻酔効果でしか治療法がない中でMPS研究会の
掃骨法でエコーによる客観視と老廃物の洗い流し、根治を目指す活動の報告もありました。
また、慢性疼痛の最新情報として「長引く痛みの原因は9割が血管」という著者の奥野祐次
医師の本の紹介があり、モヤモヤ血管(目詰まりを起こし、循環しない血管)が原因である
ことと一読を推奨されていました。
掃骨鍼法は、「異常を起こした病巣を掻把し、再構築を促す」を目標に技術的には「シコリ
は潰す、癒着は剥がす、沈着物はこそげ落とす」こと。 
 実技披露では、腹臥位で首から足先まで、前柔捻を兼ねて患者と違和感のある所を確認し
ながら、治療点を認識する。寸3-3番(ヤンイー製)で脊柱起立筋の仙骨内縁部から胸椎
まで狭脊穴をコツンと行くところまで刺入し、寸6-4番で志室穴あたりより椎骨の横突起
にあたるまで刺入させ、腰部の緩解を試みました。
 助言として、≪色々やってみたけど、この症状だけとれない時にやってみて下さい。≫との
ことでした。                    (研修委員会委員 思川 裕子)