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研修会&講座のお知らせ

平成27年度 第5回 学術講習会2015.09.08

●日 時 : 平成27年8月9日(日) 13:30〜16:45
 
●会 場 : 森ノ宮医療学園専門学校 アネックス校舎

●主 催 : (公社)大阪府鍼灸師会

講 師 : 西田順天堂内科 院長 西田 皓一 先生

講義①: 東洋医学からみた膝関節の特殊性と鍼灸治療 
ⅰ.「膝関節」の特殊性として、様々な症状が現れるのは膝関節の宿命とも言える。
ⅱ. 膝関節を取り巻く筋肉組織と骨組織について解剖学による説明では、筋肉の起始部
・停止部に痛みを生じる。神経がないのは、軟骨部のみで水液(滑液)・血液の血流
障害でも痛みを生じる。
ⅲ. 膝関節を取り巻く経絡について、特に足の三陰経については、太陰脾経と陽明大腸
経が関連し、「合谷」穴の治療が効を奏し、左右どちらに鍼をしても効果があること
を説かれ
た。
ⅳ. 膝関節部の所見(診断)では局所の発赤、腫れ、瘀血(膝窩部)の状態を確認する。
特に瘀血が大切で、舌下の静脈の怒張、項頚部の瘀斑と細絡、腹部の瘀血を確かめる。
 治療は刺絡が効果的である。
ⅴ. 鍼灸治療の適応と限界について、
①膝関節の変形が酷しい(きびしい)場合は人工関節置換術をする。成功率は高いが、
 長期間のリハビリを要する。
②手術できない例や手術拒否の患者には、痛みは鍼灸治療で軽減できる。
③膝関節の変形が軽度であれば、鍼灸治療の適応であり、④膝関節の変形がない場合
 は、鍼灸治療が即効する。
  また、膝関節の主な病気と鍼灸治 療の効果では、関節周辺の靭帯や筋肉の痛み
(捻挫や運動痛など)に最も効果的である。膝関節周辺の痛みの原因が10~20人に
 一人は腰部にある。変形性膝関節症・膝半月板損傷は程度により効果的で、【瘀血】
 が原因の痛みには刺絡が最も効果的である。
ⅵ. 治療方法には、抜缶(吸い玉療法)、刺鍼、刺絡、火鍼があり、その治療手技の使
い分けは、抜缶療法は軽い痛みに刺鍼と冷えには施灸、瘀血と炎症(発赤・腫脹)の
所見があれば刺絡療法、頑固な庳症には火鍼で最強通法である。
 遠位取穴による膝関節痛の治療には膝痛3穴(肘を曲げて肘頭から橈骨に沿って取
穴)が脛(すね)全体の痛み(変形の場合効果なし)に効果あり、左右どちらに取穴
しても効果があり、謬(ビュウ)刺論の真実性を実感されていることを強く語られた。
 また、肩関節と膝関節の関係の深さについて説かれ、膝関節内側の痛み(脾経)に
合谷穴、経筋の走行では肩髃穴を用いる奇経療法も紹介された。近位治療では相対穴
(血海と梁丘)に透刺または対刺を、経筋病巣(大腿四頭筋)には内合陽や阿是穴を
使用し、瘀血には周囲の細絡に刺絡する療法を説かれた。

 最後に火鍼はタングステン鍼(中国針)をアルコールランプで針先を焼き、針が赤
く、やや白く変化した状態で、あらかじめ印をつけた痛点に速刺速抜鍼をし、焼けた
臭いがしたら成功ですが今回、実技披露では強い局所の痛みのある対象者がなく、見
られなかったのが残念でした。
 刺絡に用いる針(注射針)の紹介や刺絡療法の必要性と効果を熱く語られ、整形外
科で効果が得られない場合、頚椎変形による手術で頚が動かなくなり、瘀血がある時
は鍼灸が有効であることなど医師の立場から針灸の適応を把握され、鍼の技術もとて
も熟練されていると感じた。   
(研修委員会委員 思川 裕子)

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講義②:「東洋医学からみた精神疾患と鍼灸治療」
 講師の西田先生は産業医もされていて、最近では特にうつ症状の訴えが多くなって
いるそうだ。企業ではストレステストが、今年12月から義務付けられる。うつ病に対
して現代医学では主に抗うつ剤が処方されるが、その効果は緩慢であまり著明な結果
が得られない場合が多い。西田先生は、鍼灸治療がうつ病の患者に対し効果的であっ
た症例を数多く経験され、すべての精神的異常に対しても同様の鍼灸治療で効果があ
ると確信された。
その結論が、「精神的異常を治す部位は、主に後頸部にある!」
 頭蓋内の脳が、静脈うっ血のために圧迫され、血流が障害されると脳の機能障害を
来たし、さまざまな精神神経障害が現れる。症状としては、思考障害、記憶障害、う
つ病、自律神経失調、頭痛などが起こりやすい。
 解剖学的には、頭蓋内の循環系では、静脈洞・静脈叢という静脈血の溜り場があり、
これが静脈血のうっ滞を起こしやすい。後頸部には内外の椎骨静脈叢が存在する。
 東洋医学的には、後頸部に多くの経脈が通過している。まさに海図上で船が狭い所
を通過する海峡に似ている。それだけに頸部は多くの異常(五臓六腑の異常)が現れ
やすい部位でもある。弁証としては、肝気鬱結(気滞の内でも特に精神的な素因に関
連したもの)が考えられる。この状態が続くと、自律神経系が過亢進になり、五臓に
も影響を及ぼし、消化器系や循環器系また筋肉系にも機能不全として現れる。まさに
全身に影響が及んでいくのである。特にうつ状態は筋肉の痛みを合併する。治療手段
は、主に刺鍼と刺絡を行う。まずは、後頭部の安心穴(図1)に刺鍼を行うが、後頸
部に細絡等が認められれば、刺絡を行なう。瘀血を排出してやることによって、頭蓋
内の静脈系脳圧が減圧される。
 鍼灸治療には、①精神安定効果②鎮痛効果③免疫亢進効果④血管拡張作用と血流増
加作用などの効果があり、筋肉系の症状だけでなく精神的な症状にも治療効果が高い
ことを示して頂いた。
 猛暑日の中で、開催された講習会でしたが、著書も多数ある西田皓一先生が講師と
いう事で、たくさんの聴講者が参加し、暑さ以上に活気のある講演でした。
                        (研修委員会委員 荒木 善行)

*写真:西田 皓一 先生