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研修会&講座のお知らせ

平成27年度1月度学術講習会報告2016.02.12

平成27年度 第7回学術講習会報告&所感

◆日時:平成28年1月10日(日)
◆会場:明治東洋医学院専門学校
◆主催:(公社)日本鍼灸師会・◇共催:(公社)大阪府鍼灸師会



講演①「更年期障害・月経前症候群」
講師(一社)大阪府医師会 理事 笠原産婦人科医院 院長 笠原 幹司 先生


  閉経前後の約8割の女性は、何らかの更年期症状を持つと言われており、 また月経周期を有する女性の約7割は、月経前に何らかの症状を有すると言われています。

 1.更年期障害

 更年期障害とは、閉経(日本人の平均閉経年齢は50歳くらい)の前後5年の計10年間に現れる多種多様な症状の中で、器質的変化に起因しない症状を更年期症状と呼び、これらの症状の中で日常生活に支障をきたす病態をいいます。主な症状としては①血管運動神経症状-エストロゲン欠落症状(顔のほてり・ホットフラッシュ・異常発汗など)②精神神経症状(情緒不安・いらいら・不眠など)③その他(腰痛などの運動器症状・吐き気などの消化器症状など)。日本人では、肩こり・易疲労感・頭痛・のぼせ・腰痛・発汗が多くみられます。
 更年期症状の発生には、エストロゲン(卵胞ホルモン)が関係しています。エストロゲンは女性ホルモンの一つで、脳から分泌される卵胞刺激ホルモンの刺激を受けて、卵巣で産生されます。女性にとって重要な働きをするエストロゲンですが、ほとんどの人は更年期を迎えるころになると、卵巣の機能が衰え、エストロゲンの産生量が減少しますこれを感知した脳は、盛んに卵胞刺激ホルモンを分泌し、エストロゲンを産生するよう促します(フィードバック)。しかし、卵巣にはその要求に応える力が残っていないため、エストロゲンの減少と卵胞刺激ホルモンの増加という「ホルモン分泌バランスの乱れ」が起こってしまいます。この症状は、女性ホルモンだけが原因ではなく、更年期の女性が直面することになる「子供の独立・結婚」や「親の介護」などの環境の変化、また、家庭や職場などでのストレスなども加わり引き起こされます。更年期障害の症状は多岐にわたり、症状の出方、強さ、期間などにはかなり個人差があります。除外診断では、症状並びに好発年齢の類似性から、うつ病・悪性疾患(子宮筋腫)・甲状腺疾患には特に注意をしなければいけません。治療法としては、血管運動神経症状にはホルモン補充療法が基本的ですが、対話療法によって社会的や家庭的な不安や悩みを聴いてあげることで、症状が緩和されるケースがよくみられます。


2.月経前症候群(PMS)と月経
  前不快気分障害(PMDD)


 月経前3〜10日間の黄体期に続く精神的あるいは身体的症状で月経発来とともに減弱あるいは消失するものがPMSで、精神症状が主体で強くあらわれるものをPMDDとします。主な身体的症状としては、のぼせ・乳房痛・頭痛・下腹痛・浮腫・体重増加などがあり、精神的症状ではイライラする・怒りっぽくなる・落ち着かない・憂うつなどがあります。本症の原因は諸説ありますが、不明です。しかし、月経困難症治療薬(GnRHアゴニスト)で排卵を抑制すると発症しないことから黄体ホルモンが誘因であることは間違いありません。精神状態の変動は、黄体ホルモンは脳内セロトニン神経系の調節に関与している可能性が推測されています。類似疾患においては月経開始後に増強もしくは持続するかしないかで鑑別診断が可能となります。
 治療は、カウンセリング・生活指導と薬物療法になります。薬物療法としては経口避妊薬(ピル)を用いることによって排卵抑制を起こし、症状を緩和させます。一般的には避妊薬のイメージがありますが、その作用を利用してホルモンバランスの変化を少なくすることが目的です。適切な使い方をすれば、かなり効果があるとの事です。
 今回の講義は、女性特有の疾患である更年期障害と月経前症候群をテーマにしましたが、いずれもただ薬を投与するだけでなく、“患者さんの話を聴いてあげることが何よりの治療になる”と臨床経験豊富な先生ならではのお話を具体的な症例も交えて講義して頂きました。
 我々鍼灸師のところにもこのような症状を抱えて通院されている患者さんが少なくありません。今回の講義を参考にして、ぜひ臨床にも活かしていきたいものと感じました。(研修委員 荒木 善行)



講演②「美容鍼灸」再現性ある高野式疏通経絡健美法
講師 宝塚鍼灸整骨院 副院長 岡本 靖子 先生


 高野式疏通経絡健美法とは、高野道代先生考案の鍼灸による「心身の健康・美容をトータルサポートする」ことを目的とする鍼術で『霊枢』根結篇を応用して効果が期待できるものです。
 美容鍼灸施術上必要な事として、我々が常々心掛けている全身調整、リスク管理、日常の生活指導に加え、皮膚の基礎知識とスキンケアアドバイスの重要性を指摘されました。
  施術効果としては、日光性黒子の消失。鼻唇溝部、眉間の皺への効果。又耳つぼ(神門、眼)に対し粒鍼貼付でのリフトアップ。女性の乾燥肌に対する鍼刺激による血色、くすみ、色むら、粉ふきの改善等の治験報告が有ります。しかし、現在の日本に於ける美容鍼灸についての明確な定義が無く、施術法も確立していないため、研究の余地が有るとのこと。
  引き続き実技に移りました。
 モデルは40歳代の女性。自分で顔を鏡で見ながら、先生の問診を受け自分の気になる部位を告げ、施術開始。
 尚、万が一皮下出血等リスクを考慮し念のため承諾書を頂いておくことも忘れずに。
 先ずは、モデルさんのクレンジングを、側で拝見している私が惚れ惚れするような見事な手つきでこなされた後、刺鍼。ここでの注意点は、施術を受ける側の心理状態を考慮し、顔面部の刺鍼は鍼柄を叩打せず押入法という手技を用いて刺入。(読んで字の如く、術者の刺手拇指と示指の腹の部分で優しく押し入れる)
 疏通経絡健美法の基本穴の手順通りに刺入、10分置鍼後手順通り抜鍼。(後述参照)
 術後のモデルさんの感想は、気になっている申告部位すべての部位の改善と言うものでした。


■施術部位と順番
1:耳 神門    (鍼)7㎜ 0.12 切皮程度以下
2:足 内庭 侠𧮾 (鍼)15㎜ 0.16 倒れない程度
3:手 合谷    (鍼)15㎜ 0.16 倒れない程度
4:頭部
    前頭筋起始部付近
    (帽状腱膜付近)
    側頭部
          (鍼)30㎜ 0.18 横刺~斜刺
5:顔面部
    顴髎 下関 (鍼)30㎜ 0.16 押入
    翳風 太陽(頬骨裏側への刺入)
    攅竹     廉泉外方2カ所
          (鍼)15㎜ 0.14 or 15㎜ 0.10


 上記はあくまで基本穴であり体質、その日の体調等考慮しツボを取捨選択すること。
 尚、頭部への刺鍼はローリングと言う下顎から側頭部に架けてリフトアップさせる手技を行い、その 手を離すこと無く押し手~刺鍼という流れになります。


■抜鍼の順番は
1:耳 神門
2:顔面部 顴髎 下関
3:    翳風 太陽
4:    廉泉外方2カ所
5:    攅竹
6:頭部  側頭筋
7:    前頭筋起始部付近
      (帽状腱膜付近)
8:手   合谷
9:足   内庭 侠𧮾

 以上になります。気の巡り等考慮すると呉々も抜鍼の順番を間違えぬように。  美容鍼灸につい て分かりやすくご講演頂き、今後の臨床にもう一つアイテムが増えたことを実感して本日を終えまし た。(研修委員会委員 中川 欣久)