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研修会&講座のお知らせ

29年度 第4回学術講習会報告①「乳がん治療について~よりよいケアを目指して」2017.11.01

■日時:平成29年9月10日(日)
■会場:大阪医療技術学園専門学校

【講演1】「乳がん治療について~よりよいケアを目指して」
 泉州クリニック院長
 住吉一浩 先生

 第4回学術講習会は、「がんと鍼灸」をテーマに開催しました。その中でも女性の癌罹患率1位で12人に1人と言われている「乳がん」にスポットを当て、乳腺専門医である住吉先生に診断から治療まで一話完結でご講演して頂きました。

1.診断:乳がんの多くは乳管から発生する乳管がんが多くを占めます。小葉から発生する小葉がんなど、その他にも特殊ながんも存在しますが、あまり多くありません。乳管がんには非浸潤性乳管癌(DCIS)と浸潤性乳管癌があり前者は乳管内部に留まっており、転移の可能性はほぼなく、予後は良好とされています。
 一般的に乳がんと言うと、後者の浸潤性を言います。乳がんの症状は主に2つ!あります。腫瘤と血性乳汁分泌(片側・単孔)があるorなしです。しかし、腫瘤や血性乳汁分泌があるからといって乳がんとは限りません。そこで良性疾患との鑑別が必要になります。
 良性疾患を挙げてみると①乳腺症(腺症、嚢胞なども含)②乳腺炎(授乳中が多い)③線維腺腫(20~30歳前後に多い)④葉状腫瘍(40歳前後に多い)⑤乳管内乳頭腫(血性乳汁分泌を伴う)となります。
 ここでの共通点は、ほとんどが閉経前に発症することが多いという特徴があります。さらに、マンモグラフィー(スピキュラといって白くギザギザの形が特徴)や超音波検査といった画像診断を用いて診断していきます。ここでがんの可能性が高ければ、細胞診や組織診といった病理診断を行います。
 細胞診は細胞異型を診るのに対して組織診は細胞異型+構造異型を診ることが可能である。組織診の方が、情報量は多く診断しやすいが、体への負担は大きいので、細胞診とどちらが有効かの判断が重要です。

2.治療:乳がんの治療手段は①手術(局所治療)②化学療法(全身治療)③ホルモン内分泌療法(全身治療)④分子標的治療(全身治療)⑤放射線治療(局所治療)と治療手段が多いのが特徴です。
 治療の原則としては、局所の切除と遠隔転移(再発)をなくすことが基本となります。よって、局所は手術±放射線、全身は化学療法やホルモン療法や分子標的治療といったことが多いです。手術で終わりという訳でなく、手術により治療と診断をします。
 以前は術後の治療は、リンパ節転移の有無でリスクのカテゴリー分類をしていましたが、最近では手術で取り除いたがんを病理診断(遺伝子解析)することによってがん細胞の性質によって分類するSubtype(サブタイプ)分類をすることによって薬物療法の選択を行います。

Subtypeにより推奨される全身治療
①ER(+)ホルモン・化療
 HER2(+)ハーセプチン
 Luminal B(約10%)
②ER(+)ホルモン
 HER2(-)
 Luminal A(約60%)
③ER(-)
 HER2(+)化療・ハーセプチン
 HER2 type(約15%)
④ER(-)
 HER2(-)化療
 Triple negative(約15%)
ER(ホルモン依存性) HER2(細胞の増殖を促す受容体)
この分類は、ぜひ覚えておきたい知識です。

3.術後ケア:術後治療における支持療法は、基本的にホルモン療法か化学療法に分かれることは、Subtype分類でも明確に理解できますが、それぞれの副作用が患者のQOLに大きな影響を与えることも事実です。そこで、住吉先生は支持療法の副作用に漢方薬治療を用いて、症状の改善を図り、QOLの低下を防ぐ症例を数多く実践し、乳癌学会において多数の症例報告をされています。
 例えば、ホルモン療法における漢方治療としては、閉経前・閉経後で多少違いますが、hot flashには加味逍遙散or桂枝茯苓丸を倦怠感には補中益気湯を処方しています。化学療法では、タキサン系による末梢神経障害に牛車腎気丸+附子末を口内炎には半夏瀉心湯を処方されています。

4.まとめ:女性の癌罹患率1位である乳がんは、我々鍼灸師にとっても決して知らないでは済まされないものです。患者にとっては治療の副作用はとても辛いものです。
 住吉先生は、よりよいケアを目指して治療の選択を行なっているそうです。そこで、術後ケアの中で鍼灸治療を活かすことが出来ないかという提言を頂きました。鍼灸治療は、末梢神経障害に関わらず、全身症状にも対応できるので、ぜひそういった症例報告が数多く出て、学会と連携しエビデンスの構築を目指して行かなければならないと感じました。


◆次回の学術講習会は、12月10日(日)に「COPD」をテーマに開催致します。詳細はこちらをご覧ください。

 
(研修委員 荒木善行)