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研修会&講座のお知らせ

29年度 第4回学術講習会報告②「がん患者に対する鍼灸の役割」2017.11.01

■日時:平成29年9月10日(日)
■会場:大阪医療技術学園専門学校

【講演2】
「がん患者に対する鍼灸の役割」について報告・感想
 森ノ宮医療大学保健医療学部鍼灸学科
 鍼灸情報センター(MUMIC)増山祥子 先生


Ⅰ、がん患者に対する鍼灸治療の目的として
①がん及びその他の病態による痛みの緩和②がん治療の副作用の緩和③長期臥床による筋骨格系の痛みや不快感の緩和④その他の心身の諸症状の緩和(頚肩こり、不眠、不安、食欲不振、便秘、しびれ etc)
⑤施術中の心地よさ⑥(当初から意図していたものではないが結果的に、鍼施術よりも対話や傾聴による苦痛の緩和)が挙げられた。
乳がん術後の疼痛に対する鍼灸と鎮痛剤投与量・回数をグラフ化したものや浮腫としびれに対する鍼灸治療、
パクリタキセル(PTX)による下肢末梢神経障害に鍼灸治療の有効性を示したデータがあるも、鍼により症状が悪化した症例もあることを報告され、鍼灸治療のドーゼへの注意を話された。また、鍼灸のエビデンスのヒエラルキーについて、RCTのシステマティック・レビュー(メタアナリシス)においてエビデンスの質の評価が低い。それは、偽鍼対対照RCTの問題点があり、鍼灸の特異的効果の有意差の検出が難しく、ほとんどのSR/MAや診療ガイドラインの結論はこの点を考慮していないためであると危惧されていた。
国内医療機関での(緩和ケア)での鍼治療実地率は6.1%だが、78%の鍼灸師ががん治療における鍼をしたことがあると回答しているのも現状である。
 
Ⅱ、鍼治療の実戦では、地域中核病院(医療法人協和会千里中央病院・大阪急性期総合医療センター)と森ノ宮医療大学との医療連携により、緩和病棟患者への鍼灸治療を実施し、現在も継続中である。
鍼治療では、医師の合意と患者の同意を得てから行い、東洋医学的診断(問診・脈診・舌診)から経穴(ツボ)や鍼を選択し、四肢や頚肩背腰部に刺鍼または低周波通電を行う。
鍼治療への訴えは、入院生活による不快症状は長期臥床による頚肩背腰痛が59%と多く、鍼治療介入患者の内訳としては、痛み(凝りを含む)が多く、浮腫・痺れ・嘔気・倦怠感と続いている。治療効果については、患者は死に向かっているので、上記の症状が段階的に減少せず、症状が急に悪化したり、患者のばらつきがあるものの、鍼治療前後では良い結果となっている。キーパーソンである看護師から「一回でいいから鍼してほしい」と依頼され、痛みと嘔気がひどく食事が摂れない患者さんが「カツ丼」を食べれた症例など様々ながん患者の症例を詳細に報告して頂いた。
付属施術所(治療院)での鍼灸治療では、がん患者へのお灸(温灸=箱灸)と自宅施灸の指導をされ、約2年間鍼灸治療47回を受けられ、亡くなる3日前まで自宅で夫との生活を継続できた一例を紹介頂いた。
 
Ⅲ、鍼灸師と患者との関わりについて、がん患者ががんの告知を受け、受容するまでを「死の受容プロセス(5段階モデル)=エリザベス・キューブラー・ロス」といい、いつでもどの状況でも鍼灸治療へのオーダーが入る。統合医療は近代西洋医学と相補(補完)・代替医療=CAMとを統合した療法で、鍼灸治療は代替医療に属するものの、緩和ケアチーム医療の主な構成(医師・看護師・薬剤師・カウンセラー臨床心理士・医療ソーシャルワーカー・栄養管理士・リハビリ専門職など)から外れた位置にあり、お試し期間のような感じを受けていた。
緩和ケアの定義での患者とその家族に対し・・・(中断)苦痛の予防と軽減を図り、生活の質(QOL)を改善するアプローチである。と定義づけられる中で、その家族に何ができるのか?患者が望むものは?「歩けること。食べられること。トイレに行けること。」に対して、食欲増進・冷え・呼吸苦などの緩和のために、患者のご家族に対して「ツボ押し」を勧められた経緯を語られた。
 
Ⅳ、患者との関わりの時期について、意識レベルが低くなっても鍼灸師の関わる時期に制限はなく、最後のときのかかわりで、鍼治療の最終回は患者さんとの別れの挨拶であり、治療から感謝へ変わり、「またどこかで・・・」という気持ちになり、エンゼルケアやグリーフケアにつながる礼・儀式ともなると考えられた。
最後に鍼灸師に求められる知識に患者やチームとのコミュニケーション能力・癌に対する知識・傾聴・やさしさ・技術だけでは危険で、リスク管理=安全な鍼ができるかが必要であると発せられていた。
 
(研修委員 思川裕子)