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素問

29年度11月素問勉強会/『素問』至眞要大論篇第七十四注 第五十四章より2017.12.26

●日時:平成29年11月12日(日) ●会場:大阪府鍼灸師会館3階
●講師:日本鍼灸研究会代表 篠原孝市先生

★医道の日本2017年11月号 『臨床に活かす古典№66 中西(ちゅうせい)』のお話より
 中国医学は古い時代は目に見える外傷や骨折から出発したのであろうが、かなり早い段階で気の医学に転じた。見えない五蔵や経脈を土台にして空気をつかんでいるような感じがある。
 ところが現代医学は、どこかが痛い場合にも、痛い場所に病変がある、あるいは別の場所に病変があって痛みが違う部分に出てくるという、実体をつかんでいる実感がある。まるで違うものである。

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★『素問』至眞要大論篇第七十四注
 
 金の時代に劉河間(りゅうかかん,又は劉完素と呼ばれる)という人が出てきて、これから勉強する第五十四章のこの部分に着目する。
 この章では風寒暑濕燥火の病の機序というのは季節の典型として出てきているのであるが、彼は季節を越えていつでも使える論に読み変えるのである。たとえば風の概念を春に限定するのでは無くて、一年中使える概念にして使う。少陰君火は熱であるが、これも夏だけではなくて一年中使える概念として読み変えるという風にした。風寒暑濕燥火というのは自然の気で外邪であるから、この外邪というものを季節から解放して、季節と関係なくこの概念を使えるという風に考えたことが決定的であった。
 
 風寒暑濕燥火というものを季節や運気論というものの足かせから離して、季節を問わずに病態を説明するための理屈に転嫁するという風にしたのが、彼の著作『素問玄機原病式(そもんげんきげんびょうしき)』である。とても重要な本であり、江戸時代には結構読まれていたが、最近はずっとあまり読まれていなかった。
 
 この本は是非読んでもらいたいなという本では、ある。
 
★第五十四章
 帝曰く(いわく)、善し(よし)。
 夫れ(それ)百病の生ずるや、皆な風寒暑湿燥火(ふう・かん・しょ・しつ・そう・か)に生じ、以て(もって)化に之き(ゆき)變(へん)に之く(ゆく)なり。經(けい)に言う、盛んなる者は之れ(これ)を寫し(しゃし)、虚する(きょする)者は之れを補う、と。余(よ)、鍚う(たまう)に方士(ほうし)を以てす。而して(しこうして)方士、之れを用いて、尚お(なお)未だ十全なること能わず。余、要道をして必ず行われ、桴鼓(ふこ)相應ずる(あいおうずる)こと、猶お(なお)刺(とげ)を抜き汗(原文は汗であるが、汙【お,よごれ】が正しい)を雪ぐ(すすぐ)がごとくならしめんと欲す(ほっす)、工巧神聖(こうこうしんせい)、聞くを得可きか(えべきか)、と。

(訳文)
 帝が言われた「よろしい」 
「百病はみな風寒暑湿燥火に生じ、それは人間やものにとって正常な状態も起こし得るし、病的な状態も起こし得る。経に言う。盛んであるものは瀉し、虚するものは補うと。私は方士にこのことをたまわった。しかし方士がこれを用いても、これだけではうまくない。虚実の補瀉や六気の原則にもとづいた治療法を行うことによって、行うことと結果がちゃんと対応する。刺さっているとげを抜いたり、汚れているものをきれいにすすいだりする。治療は、そのようなものにしたい。四つの診察法で得られた病のありかたを、聞かせてくれないか」
 
(解説)
*「百病が風寒暑湿燥火に生じる」という文章は、前提になる「化」と「変」の考え方がある。
『素問』寳命全形論篇第二十五に「人は天地の気をもって生じて、四時の法成る」「人は四時の応じることによって天地を父母とする」という文章がある。天地や四時というものに保障されて人間の生というものの安定した形があるという考え方である。この篇でいう「化」という状態である。
「変」の状態とは、たとえば春になるとめまいなどが起こりやすい。夏になるとできものなどが起こりやすいというような季節による病変のことである。これはもちろん季節の普通の状態ではなくて、気が異常に太過したり、不足した状態の時に起こる。この考え方が背景にある。
 
*方士とは『黄帝内經詞典』によると「方術に通じた人,医家と養生家」とあるので医学関係者と考えて良い。
 
*『霊枢』九針十二原篇第一に「刺を抜き、汚れをすすぐ」という言葉が出てくる。
 
*王冰という人は、工巧神聖について「鍼を工巧という。薬を神聖という」と言っている。この典拠はわからない。あまり宜しくない解説かと思う。
 
*新校正注は工巧神聖(こうこうしんせい)を『難経(なんぎょう)』第六十一難を引用して、望聞問切の四つの診察(四診)のことだと解釈している。
 
*『素問』の森を歩いてみませんか。毎月休まず第二日曜です。1992年6月14日(日)の第一回から一歩一歩歩いて、二十七年目の本年も歩いて参ります。
 
(素問勉強会世話人  東大阪地域 松本政己)