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研修会&講座のお知らせ

29年度 第5回学術講習会報告②「COPDの病態とチーム医療における鍼灸の役割」2018.01.25

■日時:平成29年12月10日(日)
■会場:履正社医療スポーツ専門学校十三キャンパス

【講演2】「COPDの病態とチーム医療における鍼灸の役割」

 前国立病院機構刀根山病院 副院長
 滋慶医療科学大学院大学教授
 前倉 亮治 先生
 
1)COPDとは、
 COPDの主訴は、労作時息切れをする。症状は、慢性の咳、喀痰。日本では、ほとんどタバコが原因。
 診断基準は、肺機能の検査をする前に気管支拡張剤を吸入後、1秒率1秒量をFVCの割合値70%切れば良い。ただし、気流制限を来す疾患、気管支喘息・気管支拡張症・結核後遺症などは除外する。 
 日本のCOPDは、肺気腫のタイプが8割から9割で慢性気管支炎のタイプが少ない。年齢は日本人の方が大きくて痩せている人が多い。ボディマスティンは日本人では、18を切った場合。慢性気管支炎の症状のCOPDの中枢気道病変と、肺気腫の病理のCOPDの末梢気道病変・肺胞壁の崩壊の肺実質病変でどちらにしても1秒量が落ちる。気道・気管支・軟骨があり細気管支になると2mm以下になると平滑筋しかなく、この部分が脆弱となり肺胞壁が潰れていく。これを肺気腫という。
 実際に酸素を取り込めるのは肺胞だけで、細気管支の所までいっても酸素を取り込めない。この部分を死腔という。解剖学的に150cc位あるので、500cc吸っている人は肺胞換気が350ccとなる。早く浅い人は300ccで、1回で150ccとなる。COPDは、肺胞、細気管支が潰れる病気。
 中枢では、咳・痰が多い。静脈が入ってきても静脈血が素通りしてそのまま行ってしまうので換気・血流不均衡が起こる。COPDは、好中球の炎症が主で気管支壁や細胞壁が破壊される。COPDのガイドラインでⅠ期:軽症FEV:80以上、Ⅱ期:中等度FEV:79~50、Ⅲ期:重症FEV:49~30、Ⅳ期:最重症FEV30未満となっている。
 COPDという病気は、進行が抑えられない。朝の肺機能が一番低く、25歳がピークでだんだん下がってくる。喫煙者か非喫煙者か、タバコの影響を受けやすい体質か。
 COPDの患者さんがしなければならないのがまず禁煙。100人中、タバコの影響を受けやすい人がCOPDになっていくのが15%で年に50ccずつ減少しFEV800ccになると、日常生活で呼吸困難感が出現する。非喫煙者でもFEVは年間30cc位下がっていく。通常タバコの影響を受けない喫煙者は、年間30ccずつ下がっていく。来院される患者は、Ⅲ期の重症FEV49~30の人が多い。COPDの目標は、在宅でできる限り長く過ごすが出来る事。
 
2)労作時息切れの病態(酸素摂取量:消費量)
 COPDは、気道閉塞性の障害で1秒率が低下するため運動量の低下を起こす。運動を障害する因子は呼吸困難感と下肢疲労。動くと息苦しいから動かないから筋力が衰えていく。そのため下肢疲労が起こる。
 それ以外に、COPDは、肺性心で肺動脈血があがり心臓に負担がかかり死因不全を起こす。不安感やモチベーションの低下も関与する。COPDの患者の換気要求量は大きいから、酸素を取り込むのにより多く換気が必要となり疲労する。軽度な動作でpHが急激に下がり、日常生活の中で常に低酸素血症にさらされ血液中にノルエピネフリン(ノルアドレナリン)があり交感神経の緊張を現す。
 
★鍼灸治療の効果
 鍼を刺鍼することによって、ボルフスケールが下がり実際に距離が伸びた。ボディマスティンインデックス増加し、プレアルブミンが短期間で増加し、リブゲージ(肋間の可動域)の改善、吸気圧・呼気圧が上がる。置鍼10分、鍼刺激による安静時酸素摂取量の低下が見られCOPDの患者の1回分時換気量が下がる。運動時間が改善される。それは、少ない酸素摂取量・酸素消費量で動作が出来ているのは、1回換気量が少なくなって楽に動作が出来る。これはマラソンと同じ事。激しい運動は出来ないが、同じ動きを長く出来るようになる。
 
3)生命予後
 初診から亡くなるまで診ていく。1秒量が減り、心疾患、肺癌が合併する事もある。痩せてくる(ボードインデックス)、呼吸困難(MRC)などが起こる。最近では、(ザルコペニア)体重は正常でも筋力が低下している人も良くない。日常歩行している人は予後が良い。運動能力のない方は、5年生存率は50%で、最大運動時の酸素摂取量と生命予後で、運動に伴うPaO2の低下・運動に伴うpHの低下・運動に伴う交感神経の緊張を伴う人の予後はよくない。
 
4)呼吸リハビリテーション
 労作時息切れと生命予後の改善
 作業療法を行うことによって在宅で生活が出来る。自分で服が着替え、お風呂には入る、トイレも自分で行ける事が大事。日常生活が楽になるように危険な状態を避けてリハビリテーションを行う。例えば、銭湯で体の洗い方が大変ならば洗い方を教えたり、棚の高さをひくくしたり、トイレを和式から洋式にする。お風呂に行く、トイレに行く、息切れを感じるかどうかの見極めを感じるところが大切。
 作業療法というのは、日常生活において何が問題になるのか聞くところから始まる。いかに息切れしているところを患者に理解してもらう。それを作業療法士と共に問題を解決していくことが必要。
 日常生活の動作指導を行う。動作は急いでするのではなく、息切れしないで出来るところの速度動作で無駄な動きを省き負担を軽減できるような指導をする。それでもダメなら休憩をし、環境整備をする。 
 動作中の酸素消費量を減らす事によって、SpO2低下など抑制すれば予後が良くなる。これは、鍼治療と同じ。
 
5)慢性呼吸疾患の痩せに対する鍼灸治療の挑戦
 COPDの患者さんは、胸郭の軟部組織がほとんどなくなり体重が減り痩せてくる。鍼灸治療をすることによって、血液・尿検査の変化は、アルブミン、プレアルブミン、ノルアドレナリンが改善される。 
 体重・食欲の変化は、体重増加、平均摂取量カロリー・食欲改善する。
 
6)呼吸リハビリテーションでの鍼灸治療の役割
 ドクター・理学療法士・作業療法師・栄養士・看護師・鍼灸師で患者さんを診ていく。
 鍼灸の役割は、栄養不良が認められるため、栄養士による低栄養の改善、鍼治療は食思不振を改善する。COPDは、初診から最後まで関わっていくが、鍼灸や漢方等も含めて患者さんにとって最後を豊かに過ごすのに役に立つと考える。医学は、全ての学問の集大成なので東西のコラボレーションが大事である。
 
 以上の内容の講義を拝聴させて頂きました。COPDは、東西ともに医学として他職種との連携を図りながら、一人の方に関わっていく大切さを学びました。以前、私は介護保険に関わって来ましたが、より一層鍼灸の素晴らしさを知っていただけるようにしていきたいです。
 前倉亮治先生、とても分かりやすく講義くださりありがとうございました。
(研修委員 松岡輝人)