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研修会&講座のお知らせ

29年度 第7回学術講習会報告①耳鼻咽喉科領域の疾患-難聴・眩暈を中心に2018.04.23

■日時:平成30年3月4日
■会場:
森ノ宮医療学園専門学校

【講演1】「耳鼻咽喉科領域の疾患-難聴・眩暈を中心に」             

 大阪府医師会理事
 大平真司先生   
 
 第7回学術講習会は、「耳鼻科領域」をテーマに開催した。耳鼻科領域の疾患として、咽喉頭異常感症・アレルギー性鼻炎・顔面神経麻痺・突発性難聴・耳鳴・メニエール病・聴神経腫瘍等の解剖・生理を含めた基礎的な説明と治療法を紹介して頂き、その中でも鍼灸師が臨床で遭遇する難聴・めまいについて末梢性か中枢性かの鑑別ポイントなど詳しく解説して頂いた。

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1.難聴は、伝音性難聴とは、音を拾って増幅する器官(外耳道・鼓膜・耳小骨など)に異常が発生するもので、耳垢詰まり、中耳炎、鼓膜損傷などが該当。基本的には治療法が確立されており、聴力の回復が期待できる。これに対し感音性難聴は、音を信号に変換し脳に伝える神経系(内耳や大脳)に異常が発生するもので、聴力の回復は非常に困難であり、突発性難聴やメニエール病、先天性難聴、老人性難聴、騒音性難聴、薬剤性難聴などが該当。

2.めまいとは?⇒諸説あるが、自分の現在おかれている状況(空間認識)に対する、目・耳(内耳)・足などの深部知覚などの体のバランスと関係のある感覚器からの情報を大脳が不一致と感じる感覚(感覚混乱説)。めまいを大きく分けると、①前庭性(内耳や脳の病気で起こるめまい)、②非前庭性(他の病気の一つの症状として起こるめまい、③加齢からくる老人性めまいの3つに分けることができる。さらに前庭性は耳の病気で起こる末梢性と脳の病気で起こる(中枢性)とに分けることができる。

①前庭性
・中枢性・・・聴神経腫瘍、脳循環障害(TIA、椎骨脳底動脈循環不全、ワレンベルグ症候群)
脳外傷(脊髄小脳変性症)
 ・末梢性・・・メニエール病、前庭神経炎、良性発作頭位めまい症(BPPV)、化膿性中耳炎、薬物中毒
②非前庭性
 ・内科疾患・・糖尿病、高血圧、低血圧、甲状腺疾患、貧血
 ・心因性・・・自律神経失調性、パニック障害、広場恐怖症、うつ状態
 ・頸椎の疾患(変形性せきつい症)
③加齢からくる老人性のめまい
 ・多発性脳梗塞(足の感覚器の機能低下、下半身の運動神経の機能低下)
 ・下半身の筋力低下によるめまい(サルコペニア)
 ・老人性うつ病によるもの
 ・不安障害によるもの(パニック障害も含む)

3.めまいの診断ポイント
 一口にめまいといっても、様々な原因疾患が考えられる。統計的には原因疾患の約4割~5割はBPPV(良性発作頭位めまい症)である。そこで重要となってくるのが鑑別診断となり、問診や簡単な検査でも末梢性か中枢性かの鑑別は大方可能である。
 
①問診:めまいが回転性(グルグル)か?非回転性(フラフラ)か?めまいに伴う主な症状は?どんな時におこるか?によって原因疾患と特定していく。
 回転性(グルグル)では内耳疾患が多く(中枢疾患がないわけではない!)、耳鳴りを伴えばメニエール病の可能性が高い。例えば、頭を動かした時に数十秒の回転性めまいのみの症状であれば⇒良性発作性頭位めまい症が考えられる。
 起き上がれないほどの激しい回転性めまいと頭痛・激しい吐き気と嘔吐⇒小脳梗塞・出血といった具合に鑑別できる。
②検査:画像診断(CT,MRI,MRA)、脳波・心電図、超音波ドップラー検査(椎骨動脈血流の測定)、耳鼻科的検査がある。耳鼻科的検査にはフレンツェル眼鏡(目が拡大され、眼球の動きを観察できる眼鏡)を用いて眼振が現れるかどうかを観察する。
 鍼灸師でも可能な平衡機能検査としては、ロンベルグ検査(両脚起立検査)と足踏み検査等がある。
③治療:
 ①薬物治療
 ②手術治療(前庭神経切断術、内リンパ嚢開放術+ステロイド挿入)
 ③BPPVに対する浮遊耳石置換法(Parnes法、Eplay法、Lempert法)
 ④運動療法(簡易平衡訓練法、Brandt&Daroffの頭部変換運動)
 
4.まとめ
 めまいの症例の半数は耳からのめまいで、生命の危険はない。しかし、’~8%程度は中枢性のめまいであり、生命にかかわる。
 臨床の上で重要なことは、問診によって、めまいの種類や程度、基礎疾患の有無などをしっかり聞き出し、さらに平衡機能検査等で大方は鑑別可能であるということ。

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 後日、大平先生より、以下の感想及び質問に関する回答を頂戴し、参加者の皆さんに伝えて欲しいとのご要望がありましたので、以下に引用させて頂きます。

1.末梢性と中枢性のめまいの鑑別は、鍼灸院では、診察に入ってくるときの歩行状態、ロンベルグ検査、詳しい問診である程度(8割)可能です(これは講演の中でも少し話しました)。
 ただし、聴神経腫瘍は脳腫瘍ですが、初期は種々の検査で末梢性のパターンをとることが多いので注意が必要です。 
2.嘔吐イコール中枢性めまいではないです。メニエール病や、BPPV、前庭神経炎でも嘔気・嘔吐する人はありますが、全くしない人もあります。個人差が大きいです。然し、小脳出血や梗塞では激しい頭痛と同時に激しい嘔吐はほぼ必発です。そのあたりの説明不足がありました。 
3.鍼灸院では寝台に横になっていただくときに楽な頭位で臥床していただくとのこと。自然と健側が下になり、患側が上になり、これは私たちも理解しているところです。そして上の方になっている耳の方に鍼を打つというのは合理的です。

(研修委員長 荒木善行)