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研修会&講座のお知らせ

平成30年度 第1回学術講習会報告①「22世紀型『鍼灸』に向けて-既存の概念を超え次世代へ-」2018.06.26


 
■日時:平成30年5月13日
■会場:履正社医療スポーツ専門学校

【講演1】「22世紀型『鍼灸』に向けて-既存の概念を超え次世代へ-」 
 
 広島国際大学保健医療学部准教授 諌山憲司 先生   
 
 いよいよ平成30年度の学術講習会も始まり、5月13日(日)には第1回学術講習会が、「災害医療」をテーマに開催された。講師の諌山先生は消防官として19年間、大小様々な緊急・災害の最前線で勤務され、現在では、救急救命学の教育指導とともに、持続的かつ災害レジリエント注1なコミュニティづくりに取り組んでおられる。今回は「災害医療」の分野にとどまらず「医療・社会全体」がこれからどの様に持ちこたえていけるか?つまり社会や地域の持続可能性および災害レジリエンス注1の実現に向けた知見、さらには鍼灸師がどのような役割を果たすべきなのかをご講演して頂いた。

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1)鍼灸学とは?
 学問とは、人類の知的認識領域の拡大であり、人類共有の知的財産の拡大を意味している。学問の効用は2つあり、「①生活上の便宜と利得の増大」「②自分を作り上げ確立していくこと」で、教養による人間形成を通じての社会形成であると文部科学省のHPに明記されている。鍼灸も学問としての定義付けが必要であり、全ての鍼灸師が目指すべき理想の方向性を示すものとしてあってもよいのではないか。

2)なぜ既存の概念を超える必要があるか
 日本は、2008年の1億2,809万人をピークに2010年から人口減少社会へ転じ、長期の人口減少期に入った。2060年には8,673万人にまで減少し(高齢化率約40%)、約100年後には現在の人口の3分の1の約4,000万人にまで収縮すると予測されている。また近い将来、南海トラフ・首都直下地震等の大規模災害が危惧されるなか、従来の概念や対策のみでは想定を超える危機に対応できないと考えられる。

3)超持続的な災害レジリエント社会
 持続的な社会を維持していくためには、社会・経済・環境がバランスよく連動していく必要がある。しかし、今の日本では超少子高齢化を迎え、人口減少が進み、また限りある地球資源の中で、人的・物的資源に制限があり、現状のままでは日常の医療・介護だけでなく、ネクストクライシスに対応できない。日本が歴史上経験したことのない社会状況を迎える中、ネクストクライシスに備えるには、まず災害対策の概念を変革する必要がある。そして、医療やヘルスケアにおいても、発災後の対応や復興にだけ重きを置くのではなく、発災前の平時からの持続的な災害対策が重要である。
 例えば環境面ではEco-DRR(生態系を基盤にした防災・減災)の実践がある。これは、生態系・生物多様性保全(健全な森林・サンゴ礁・湿地)などをすることで、危険な自然現象に対する緩衝帯・緩衝材として用いるとともに、食糧や水の供給などの機能により、人間や地域社会の自然災害への対応を支える考え方である。
 またキューバの事例を参考に、日常からNTM(自然伝統医学)を活用することが地域住民の疾病予防や健康の維持・増進に寄与するだけでなく、地域の福祉やコミュニティの活性化に繋がる。

4)22世紀型「鍼灸」に向けての提言
 鍼灸も現状のままでは、今後の社会状況に対応できなのではないか!
→既存の概念を超えて導きださなければならない!
(例えば、鍼灸師が看取りの部分で他に関われることがあるのでは?)
→生老病死社会に適合した鍼灸を続けること。それが超持続的な鍼灸学を形成していくのでは・・・

5)まとめ
 医療・福祉分野にとどまらず、マクロな視点から社会や地域の持続可能性・災害レジリエンスを解説して頂き、また鍼灸師がどういう役割を果たすのかをサジェスチョンして頂いた。今後の我々の在り方を考えさせられる問であり、また早急に答えを出していかなければならない課題でもあると感じた内容だった。
 
注1)レジリエント・・・「防災力のある(形容詞)」
  レジリエンス・・・「防災力(名詞)」
 災害やテロなど想定外の事態で社会システムや事業の一部の機能が停止しても、「全体としての機能を速やかに回復できるしなやかな強靭さ」を表わす。
 
(研修委員長 荒木善行)