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研修会&講座のお知らせ

平成30年度 第2回学術講習会報告①「未病医療としての鍼灸療法の展望」2018.07.25


 

 
■日時:平成30年7月1日
■会場:明治東洋医学院専門学校

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 講演に先立ちまして、11月24日(土)~25日(日)に茨木市の立命館大学大阪いばらきキャンパスで開催されます「第46回日本伝統鍼灸学会学術大会」の会頭である井上悦子先生に、大会の見どころ等をご案内して頂きました。

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【講演1】「未病医療としての鍼灸療法の展望」
 
 明治国際医療大学学長 矢野忠先生

 これからの社会が求める医療とは、少子超高齢社会・ストレス社会などによる疾病構造の変化により治らない・治りにくい病、心の病など社会に相ふさわしい医療が求められている。

 医療モデル(医療保障、治療医学、病院、患者)から生活モデル(健康保障、予防・ケア、地域、生活者)への変化である。治療医学中心の医療システムでは、これからの疾病構造に十分対応できず、患者の医療的満足度も得られない。これから求められる医療システムとは健康・予防・ケアを中心とした医療で、生活者のための医療が必要である。

 未病概念と未病治について、古医書による未病とは健康と疾病との間の半健康状態を指している。また未病治については、聖人は己病を治さずして未病を治す、とされている。

 鍼灸治療は、健康維持・増進、予防・ケア、未病治を最高の医療行動目標とするところに大きな期待がされている。

 生活習慣病に対する鍼灸療法の取り組みと対応については、本格的な生活習慣病になる前段階の未病生活習慣病を対象として発展させることが最も望ましい。未病糖尿病に対しては、運動療法に鍼治療(灸治療も)を併用することが有用とされている。

 認知機能障害に対する鍼灸療法については、認知症高齢者数が全国に約462万人と推定されており、予備軍であるMCI(認知機能障害)の人が約380万人という現状においてどのように認知症を食い止めるかが、大きな課題になっている。患者数だけでなく、認知症の社会的費用についても14兆5千億円と推計されやはり問題になっている。予備軍についてはMCIの定義及び診断基準やチェックリストで確認することができ、MCIを放置にしておくと5年間で約40%の人が認知症に移行してしまう。この認知症への移行を防ぐことが大切である。

 認知症予防に有望とされるものは、1)2型糖尿病のコントロール、2)高血圧と高脂血症の改善、3)望ましい体重の維持、4)社会交流と知的な活動、5)運動の習慣、6)果実と野菜の多い健康的な食生活、7)禁煙、8)うつ病である。

 食生活では、地中海食や抗酸化物の摂取。運動では有酸素性作業能の高さ・身体活動の多さが数年後の認知機能低下を予測としうる因子である。睡眠・知的行動習慣・交流では1日30分以内の午睡習慣・認知トレーニング・1週間に1回以上他人と会うなど。また総合的な栄養改善・運動・知的活動からアルツハイマー病予防を目指す。

 鍼灸治療は、MCIに対して認知機能の改善など一定の効果があり、認知症への進展を予防できる可能性が指摘されている。治療方法としては、運動療法や薬物療法に鍼治療を併用することでより効果があるといわれている。これからの鍼灸医療の向かうべき道は、国民の鍼灸治療に対する認識を「治療の療法」から疲労回復を含めた健康維持・増進・予防・ケア及び未病治に有効であることを広く理解してもらい、鍼灸治療の受診率の向上に繋がることがわれわれ鍼灸師の課題である。