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素問

平成30年7月素問勉強会(30年度)/『素問』至眞要大論篇第七十四注 第五十五章より2018.08.25

●日時:平成30年7月8日(日) ●会場:大阪府鍼灸師会館4階
●講師:日本鍼灸研究会代表 篠原孝市先生

★医道の日本2018年7月号 『臨床に活かす古典№74 工具』のお話より
 
 辞典なしで中国の二千年前の本を読もうなどとは、大それた考えである。『大漢和辞典』(大修館書店、1989~1990修訂第2版)は不可欠であると思う。
 
この辞典は非常に便利で必須のものであるが欠点がある。主な材料が古いもの、南宋時代(1127~1279)以前のことばを対象にしていることである。中国語はこの辞典が対象にしている言葉の時代より後は、どんどん口語化してきた。書きことばの中にだんだんと喋りことばが侵入してくると、明時代や清時代のことばが読めなくなるのである。
 
 いっぱい辞書を買うのは大変である。今は画期的なサイトがある。『国学大師』というサイトである。これを見ると、辞書がなくても調べたい文字を入れると、どの辞書の何ページに載っているかが出てくるし、対象のページの画像まで出てくる。言葉を入力すると、辞書の掲載ページの画像が出てくるので、間違いようがない。
 
 工具書でわれわれにとって大事なのは医学用語辞典である。現在では李経緯ら主編『中医大辞典』(人民衛生出版社、2006第2版)が良い。第2版で大幅に増補されているので第1版ではなく第2版が良い。分厚いものであるが、これは持っていないといけない。
 
『中医大辞典』は、項目数が多いという事もあるが、色々な概念をある程度、適当に切り取ってあるということがある。今の中医学に使えれば良いので、たとえば「中風」という概念が『傷寒論』と金元明医学でどのように違うのかということは必要がないという発想がある。そういう発想で作られているので「中風」という概念を『傷寒論』を適用した時と金元明医学を適用した時では、空振りになる時がある。そういうことで古医書を読む時の辞書としては、どうも欠けたところがあると私は判断している。
 
 辞書のかたちではないのであまり注目されないが、日本の江戸後期の考証医家の医論随筆集というものがある。多紀元簡(たきげんかん)という人の『医賸(いしょう)』、『櫟窓類鈔(れきそうるいしょう)』、多紀元堅『時還読我書(じかんどくがしょ)』などがある。これらはすべて京都大学富士川文庫のサイトで画像が写真公開されている。すべて見ることができる。
 
 現在、早稲田大学と京都大学富士川文庫のサイトで公開されているものだけでも、大半のものを見ることが可能である。
 
 鈴木良知の『医海蠡測(いかいれいそく)』というのも、また良い。サイトに出ていないのが勿体ない。
 
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★『素問』至眞要大論篇第七十四注 第五十五章
 
 帝(てい)曰く(いわく)、氣を調えるに非ず(あらず)して得る(うる)者、之れ(これ)を治する(ちする)こと奈何(いかん)。毒有り、毒無し。何をか先にし、何をか後にする。願わくば其の道を聞かん、と。
 
(解説)
 
◎張介賓(ちょうかいひん)という人は、「氣を調えるにあらずして」を、以下の王冰(おうひょう)の注を引き、「4.気が動くことによらないで、病が外側に生ずるもの」だと考えた、のかと思われる。
 
◎王冰の注(張介賓の引用から)
 病気のなりたちを四つに分けている。
1.気が動くことによって、病が内側に生じるもの。
積聚(しゃくじゅう)癥瘕(ちょうか)、瘤氣(りゅうき)癭起(えいき)、結核癲癇(てんかん)の類をいうなり。
*からだの内側に生じてきて、さわって奥のほうにいかないとわからないもの。
 
2.気が動くことによって病が外側に生じるもの。
癰腫(ようしゅ)瘡瘍(そうよう)、疣疥(ゆうかい)疽痔(そじ)、掉瘛(とうけい)浮腫(ふしゅ)、目赤(もくせき)熛疹(ひょうしん)、胕腫(ふしゅ)痛痒(つうよう)の類をいうなり。
*からだの外に変化の起るもの。今でいう皮膚病のようなもの。まったく表面的なもの。
 
3.気が動くことによらないで、病が内側に生ずるもの
留飮(りゅういん)癖食(へきしょく)、饑飽(きほう)労損(ろうそん)、宿食(しゅくしょく)霍亂(かくらん)、悲恐(ひきょう)喜怒(きど)、想慕(そうぼ)憂結(ゆうけつ)の類をいうなり。
*どちらかと言えばからだの上のほうに生ずるようなもの。精神的なもの。
 
4.気が動くことによらないで、病が外側に生ずるもの
瘴氣(しょうき)賊魅(ぞくかい)、蟲蛇(ちゅうだ)蠱毒(こどく)、蜚尸(ひし)鬼撃(きげき)、衝薄(しょうはく)墜墮(ついだ)、風寒暑濕、所射(しょしゃ)、刺割(しかつ)棰朴(すいぼく)の類をいうなり。
*外傷など。
 
 ◎毒あり、毒なし:毒は激しい作用の薬。毒無しは、緩和な作用の薬

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(素問勉強会世話人  東大阪地域 松本政己)