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研修会&講座のお知らせ

平成30年度 第4回学術講習会報告②不妊の基礎知識と鍼灸治療~男性不妊(実技供覧)2018.12.22


 
■日時:平成30年11月11日
■会場:森ノ宮医療大学 コスモホール

「不妊の基礎知識と鍼灸治療~男性不妊」(実技供覧)             
 明生鍼灸院副院長 木津正義 先生   

 最近では、主に不妊鍼灸治療を行う治療院も増えてきている。背景には、晩婚化に伴う高齢出産等により不妊治療を希望されるケースが多く、そういった中、鍼灸治療のニーズが高まりつつある。そこで今回は、明生鍼灸院(名古屋市)の副院長で数多くの不妊鍼灸治療に対する臨床経験が豊富な木津先生に実技も交えて、4つのチャプターに分けて講演して頂いた。

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Ⅰ 不妊の基礎知識
 不妊症の定義とは、WHOでは2009年から「1年間の不妊期間をもつもの」と定義しており、米国の生殖学会でもWHOと同じ1年間の不妊期間を持つものとすると同時に「女性の年齢が35歳以上の場合には6ヶ月の不妊期間が経過したあとは検査を開始することは認められる」と提唱している。

 不妊治療の流れとしては、何らかの異常があれば原因疾患の治療が第1選択肢となるが、特に異常がない場合は、タイミング指導(6ヶ月~12ヶ月)→人工授精(6ヶ月~12ヶ月)→ART(体外受精・顕微鏡受精等)と進んでいく(※女性が35歳以上の場合はステップアップが早くなる)。年々、ARTの治療実施件数は増加しているが、不妊治療における生産分娩率は年齢が高くなればなるほど下がっていく。30歳では19.9%、40歳では7.7%、45歳では0.6%と35歳を境に生産分娩率が急激に下降していく。これは、精子が新たに造られるのに対し、卵子はストックされていて、年齢が上がるにつれて卵子の質が低下することが要因である。

Ⅱ 不妊の診療で必要なことは何か?
 このチャプターでは西洋医学の基礎知識として押さえておくべきもの
①基本検査
②ホルモン
③排卵
④男子不妊
について解説された。

①基本検査には、基礎体温の測定・ホルモン検査・頸管粘液検査・ヒューナーテスト・子宮卵管造影・経膣超音波診断・精液検査がある。
②ホルモンでは、a エストロゲン(卵胞期に多く分泌され、子宮内膜が増殖・肥厚する)b プロゲステロン(黄体期に多く分泌し、基礎体温上昇に関与)c 卵胞刺激ホルモン(FSH)d 黄体化ホルモン(LH)の4つは押さえておきたい。
③排卵については、1個の卵子が排卵する際、500~1000個の原子卵胞から選別され、半年から1年かけて発育する。ヒト卵胞の発育過程は、原子卵胞→(150日)一次卵胞→(120日)二次卵胞→(約3ヶ月)胞状卵胞に分類される。
④男性不妊は不妊症全体の40~50%と意外に多い。原因としては、精巣での精祖細胞から精子までの分裂過程、及び精子の成熟過程の障害である造精機能障害で、男性不妊の70~90%を占める。なぜこういった事態になっているかと言うと、「精子力の衰え」が原因で、つまり精子の「運動率の低下」「精子数の減少」「DNAの損傷」であり、まさに精子の質が落ちているのである。精子の質を落とす要因としては、座りすぎ、脂肪のとりすぎ、運動不足、睡眠不足といった生活習慣からの活性酸素の増加とテストステロンの減少である。実は精子は74日のサイクルで新しくなるため、生活習慣の改善によって、ある程度回復することが可能である。治療の際、問診により生活のアドバイスをすることも重要。

Ⅲ なぜ鍼灸が必要なのか?鍼灸で何が改善されるのか?
 不妊治療で大切なことは、「育む環境」であり、それは血流を良くすることである。卵巣や精巣に向かっている血管の周りには自律神経が多数存在し、卵巣交感神経活動亢進がストレスによる卵巣機能障害に関与することも示された。よって鍼灸治療により、交感神経活動を抑制し副交感神経に働きかけることで、血流の改善が促される。2次卵胞から排卵までの3ヶ月間は卵胞発育にとって大事な時期であるため、この期間に出来るだけ血流の良い状態にすること重要である。よって定期的な治療の継続が必要となってくる。

Ⅳ 不妊に有効な鍼灸とは?(実技)
 鍼灸治療は、基本施術(自律神経)・中髎穴刺鍼(子宮)・陰部神経鍼通電(卵巣)を適切な時期に行う。今回の実技では、中髎穴刺鍼と陰部神経鍼通電を披露して頂いた。

中髎穴刺鍼・・・胚移植に向けた治療、子宮内膜が薄い、排尿障害があるなど(子宮)
①中髎穴を取穴し、鍼を皮膚面から頭側へ約45°の角度で切皮し、仙骨上の靭帯を目安に刺入していく(使用鍼:75mmもしくは90mm 8番)
②刺鍼転向を数回繰り返し、約60mm刺入する。
③刺入方法は左右交互に徒手的刺激(木津先生曰く、雀啄ではなくバイブレーション)を合計10分間、深部に重い得気が得られるように行う。
 陰部神経鍼通電・・・採卵に向けた治療、排卵障害、良好胚ができない、慢性の骨盤痛など(卵巣)
 ①上後腸骨棘と坐骨結節内側下端を結ぶ線上で、上から50~60%の領域
 ②左右の陰部神経刺鍼点に70~80mm度刺入(使用鍼:75mmもしくは90mm 8番)
 ③陰部へ響くことを確認した後に低周波置鍼療法を5Hzで10分間行う。

●まとめ
 不妊患者は多くのストレスの中、必死に頑張り続けていて、全ての患者が妊娠できるとは限らない。その中で治療者が正しい知識・正しい技術を持って患者さんに臨めば、少しでも不安を取り除くことが出来る。ただ治療するだけでなく、精神的なフォローも重要である。

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 今回の講演は、とても90分で収まりきれる内容ではありませんでしたが、要点をピックアップして頂き、非常に中身の濃いものであった。

(研修委員長 荒木 善行)