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平成30年12月素問勉強会(30年度)/『素問』至眞要大論篇第七十四注 第六十章より2019.01.24

●日時:平成30年12月9日(日) ●会場:大阪府鍼灸師会館3階
●講師:日本鍼灸研究会代表 篠原孝市先生

・医道の日本2018年12月号 『臨床に活かす古典№79 解読 その4』のお話より

 

 
 気の医学というものが、中国医学の病証学の形成に関係しているというふうに最近思うようになった。
「気」に関しては深淵な哲学書のような本が出ている。露骨に言ってしまえば「気の医学」とは、からだの中をみる方法がないところから発展した医学といえる。たとえば血圧や尿検査、血液検査などは中国医学の方法では一切わからない。
 
 中国医学の脈診で血圧はわからない。まして尿検査、血液検査の種々の項目で中国医学の病証はわからない。
 
 からだの中の状態はわからなくて、からだの表面にあらわれる症状や脈状、そのほかの色々な所見しか診断方法がないものが、おそらく「気の医学」ということなのだろうと思う。
 
 直観して何かがわかると言うひともいるが、直観も何もない、ただ何もわからないというようなことが「気の医学」ではないかと思う。
 
 頭がいたくて汗がよくでるというものと、腰がいたくて尿がでないというものは別の病態だというように、その分類を長いあいだに行い、しかも病態Aと病態Bを関係付けていき、できたものが中国医学の病証学だと思う。
 
 
★『素問』至眞要大論篇第七十四注 

第六十章

 帝曰。善。病之中外何如。

 帝曰く、善し。病の中外、何如ん(いかん)、と。
 
(訳文)
 帝が言った。「よろしい」
「では、病の内外とは、どのようなものか」
 
(解説)
中外:方藥中は、著書『黄帝内經運氣七篇講解』で「内外」のことという。
 
 
 岐伯曰。調氣之方。必別陰陽。定其中外。各守其郷。内者内治。外者外治。微者調之。其次平之。盛者奪之。汗者下之。寒熱温涼。衰之以屬。隨其攸利。謹道如法。萬舉萬全。氣血正平。長有天命。
 岐伯曰く、氣を調うる(ととのうる)の方(みち)、必ず陰陽(いんよう)を別ち(わかち)、其の(その)中外を定め、各々其の郷を守る。
 内なる者は内治(ないち)し、外なる者は外治(がいち)す。
 微なる者は之れ(これ)を調え、其の次は之れを平らぐ(たいらぐ)。
 盛んなる者は之れを奪い、汗(あせ)する者は之れを下し、寒熱温涼、之れを衰えしむるに屬(ぞく)を以て(もって)し、其の(その)利する攸(ところ)に隨う(したがう)。
 道を謹むこと法の如くなれば 【道を謹みて法の如くすれば】 、萬舉萬全(ばんきょばんぜん)、氣血正に平らかにして、長く天命を有つ(たもつ)、と。
 
(訳文)
 岐伯が答える。「治療には陰陽の病の区別をつける。疾病がからだの深いところにあるか浅いところにあるか発生部位を定める。おのおのその郷をまもる。軽微な病というものは強い薬を用いないで、その症状の性質にもとづいて薬物や食物によって調和させれば良い。疾病が少し重くなった状態では薬物の作用のより強いものを選んで、それによって平定する。疾病の症状の展開がはげしくて重いものには、強い薬を使い邪気を(汗や便として)急いで体外へ出してやる。寒熱温涼、それぞれの性格を持った薬によって病気の邪気というものを衰え減らすには、その所属(病気の性質にもとづく一番親和性のある場所、たとえば風は肝、寒は腎)をもってする。寒熱温涼の薬を効かせる場合は、病位や病勢にもとづいて一番効果のあるところにしたがって使う」
「疾病の診断、治療のやり方をそのようにすれば、効かないものはない。正常な健康の状態で長く天命を保つことができます」
 
(解説)
 方藥中(ほうやくちゅう)著『黄帝内經素問運氣七篇講解』のように一つ一つのことばに注をつけている本は、中国にもあまりない。ここではその注解を引き参考とする。
 
「調氣」は治療のこと。「陰陽」は疾病が陰の病か陽の病かということ。「中外」は内外のこと。
「微者」は軽微な病のこと。
「汗下之」(汗する者は之れを下し)という文章は疑いがある。「汗下之」(これを汗し、これを下し)にしないと文章の意味が通らない。陽実ならば汗を出させて、陰実であれば下してやる。 *訳文は後者を採った。
「道」は診断治療の方法のこと。「萬舉萬全(ばんきょばんぜん)」は百分の百有効なことだという。
「気血正平」は正常な健康な状態のこと。「長有天命」は健康長寿のこと。
 
「各守其郷」: 張燦こう(こうは玉へんに甲)というひとは「郷」とは区域の意味だという。たとえば風であれば肝の蔵に影響を与えるので、その蔵を守るという意味ではないかと考える。
 
 
 帝曰。善。
 帝曰く、善し、と。
 
(訳文)
 帝が言った。「よろしい」
 
 
 運気論は、ここで完了です。2019年新春は、著至教論篇第七十五がはじまっています。『素問』の道のりもそろそろ終盤です。『素問』の森を歩いてみませんか。毎月休まず第二日曜です。
 

 
(素問勉強会世話人  東大阪地域 松本政己)