公益社団法人 大阪府鍼灸師会

研修会&講座のお知らせ

令和4年度第1回(5月度)学術講習会報告

講演①「コロナ禍の子どもたち~漢方薬の役割~」


講師:さかざきこどもクリニック 坂崎 弘美先生
日時: 令和4年5月8日(日)
会場: 大阪府鍼灸師会館

① コロナ禍での小児科外来について
 子どもにとっての新型コロナウイルス感染症は、1)成人より罹りにくく、うつしにくい。2)第6波のオミクロン株になってからは、子どもの感染が増加。3)かかっても、ほとんどが軽症、重症化しにくい。
 という特徴があり、インフルエンザウイルスより軽いが、10 日間の隔離が生活や行動の規制によって、心と身体に様々な悪影響(ストレス)を及ぼすことが問題となりました。
 このことから、1)今まで一般小児科外来で一番多かった感染症の減少。2)不定愁訴(頭痛、腹痛、眠れない、よく泣く、登校(園)しぶり、ネット・ゲーム依存など)の相談の増加。3)肥満児の増加。4)今まで気にしていなかった症状 の相談(便秘、低身長、夜尿症、思春期早発など)へと小児科外来受診の変化を挙げられました。
 外来のシステムも変化され、1)完全予約制により待合室の混雑の回避。2)WEB 問診により前もって症状の確認ができるようにする。3)オンライン診療により来院したくない人の診察もでき、新型コロナ感染症の診察およびみなし陽性が判断でき、費用はクレジット決済ができる。4)発熱外来の開始と簡易診療室やクリーンパーテーションを設置された。
 こころにトラブルを抱える子どもが増えていて、国立成育医療研究センターの2021 年12 月の第7 回調査報告書でのコロナ× 子どもアンケートで中等度以上のうつ症状が小学生4-6 年生で10%、中学生22%、高校生23%にも上ります。
低学年のこどものこころの様子も多々あるなかで、自傷する子どももいるそうです。子どもはSOS を出しにくいので子どもの心によりそう診療が必要でママのストレスも大きいのでママのケアも重要と説いていました。診療では、コミュニケーションが大切で、【話を聞く・理解して認める・頑張りをねぎらう】ことから母親や子どもの心身状態を考えて漢方薬を処方されます。
 子どもはストレスを大人のように言葉で認識し悩むのではなく、直接身体で認識して心身症になるそうです。『心身一如』心と身体をわけない考え方が漢方薬と同じで、漢方薬は一つの方剤が身体心理面に効果を発揮することができるので、子どもに対して漢方薬を処方されています。

② 子どもに対する漢方診療の実際では、腹痛、頭痛、不安による登園しぶりや頻尿や吐き気、睡眠のトラブル(夜泣きや不眠)、チック(咳払いやのどのひっかかり)、思春期の様々な訴え(朝起きれない・起立性調節障害・便秘・鉄欠 乏性貧血)、新型コロナウイルス感染症について症例を挙げて、処方のポイントや処方漢方薬の効能効果、成分・分量、臨床応用について詳細に解説頂きました。
 どの症例も漢方薬を処方するだけでなく、生活習慣の改善が必要で大切です。特にどの症状でも言及されていたのがバランスの良い食事・適度な運動・睡眠不足〈ゲームやスマホ制限や子どもの活動内容(塾や習い事)の調整〉が問題視されていました。そして、ママの緊張(イライラ)が子どもにもストレスを与えるので、『母児同服』を唱え、ママのこころのトラブルや不定愁訴に対する漢方処方も紹介されました。

③ 子どもを診る際に注意すべきポイントでは、①食べる・遊ぶ・寝るができているか。(出来ていると重症の子はいない。)②子どもは正直。(本当にしんどい時は動かない)③ママの言う事を真剣に聞く。(何度も同じことを言うなどないがしろにしない)④子どもと仲良しになる。(仲良くなると自ら話してくれる)を心掛けているそうで、病気だけを診ることから子育て支援と親育てへの支援が出来ればと思っているそうです。
 小児科医と鍼灸師の連携が出来ればとも考えて下さっていて、1)小児鍼に興味をもつママが多い。2)どこの鍼灸院に行ったらよいかわからい。3)小児鍼に対応できる医院の検索。4)小児鍼をしている子どもたちの感想が、「気持ちいい」と好評である。5)自宅でもできる方法があるのか?と疑問や問題を提起して頂きました。

 まとめとして、1)コロナ禍で心にトラブルを抱える子どもが増加。2)子どもとママの心に寄り添う診療が大切。3)漢方薬は身体も心も元気にする(心身一如)4)子どもとママの心身の健康に漢方薬はとても役にたつ。以上により、坂崎先生は日々の臨床で、やはり病気だけを診るのではなく、子どもとママとの心身の健康と子育て親育てへの支援に尽力されている先生で、鍼灸やツボにとても興味を持ち、連携を考えて下さっている小児科医でした。

(研修委員 思川裕子)
講演②「小児に対する鍼灸治療~もっと使える小児はり~」


講師:さきレディース鍼灸院 院長 村本 早希先生
日時: 令和4年5月8日(日)
会場: 大阪府鍼灸師会館

村本先生は、奈良県で小児と女性の為の鍼灸院を運営しており、3 児の母親でもある。長女の喘息、チックと次女の重度アトピー、食物アレルギーをきっかけに、本格的に小児はりを勉強され、現在も特にアトピーなどのアレルギー疾患の小児に対する治療を得意としている。何枚か写真を紹介して頂いたが、重度のアトピーの小児が本来の健康な肌に戻っていく姿を拝見すると、改めてこの鍼灸治療の素晴らしさを感じた。
小児に対する刺さない鍼、小児はりは、もともと日本発祥の鍼術で、江戸時代に考案されたと言われており、大正時代から昭和中期にかけて最盛期を迎える。現在その形状や手技は何種類かあるが、小児に触れる時に大切なことが、「柔らかさ」と「温かさ」である。小児にとって初めて鍼灸院にいくことは、怖いことであるということを理解し、緊張をほぐす為の配慮が必要。はりは優しくて心地よいことだと体験すると、小児自ら「通いたい」という鍼灸院になる。
 ここで、「心地よい」という感覚に影響しているのが、オキシトシンというホルモンである。脳下垂体後葉から分泌され、分娩時の子宮収縮や乳汁分泌の促進に関与するだけでなく、ストレスの緩和や不安感の減少、他者との積極的な交流への意欲の向上など、幸せな気分になるホルモンということで注目されている。
 小児はりの対象年齢の目安としては、生後1 か月~小学6 年生。適応症状は小児神経症、鼻炎や咳などの呼吸器症状、便秘や下痢などの消化器症状、アトピーや喘息などのアレルギー症状、その他肩こり・頭痛、発達障害など幅広く適応する。特に「かんむし(小児神経症)」は、夜泣き・キーキー声を出す・人見知り・ひきつけ・チック・どもり・斜視・自閉症など、小児が引き起こす様々な症状の俗称である。この「かんむし」が改善することで、子育て世代の母親達にも大いに貢献できることから、現代における小児はりの普及の必要性を強調されていた。
 小児の東洋医学的特徴は、陰が不足して陽に傾きやすい。五臓では肝・心があまり、脾・肺・腎が不足している。具体的には、怒りやすい・発熱・痙攣などは肝の亢進、笑いやすい・テンションが高いなどは心の亢進。また、下痢や嘔吐は脾の弱り、呼吸器症状・皮膚疾患は肺の弱り、身体的な未発達は腎が未熟と解説された。


 治療の前の診断方法として、特に腹診の重要性について詳しく解説していただいた。
腹部をおおよそ9 つに区分し、皮膚の感覚(弾力)や打診の際の音の変化を把握することで、治療部位やドーゼ、さらに治療効果を判断できる。また保護者にも音の変化を確認させられることは説得力にもつながる。皮膚の感覚については、弾力がある場合の方が回復力あり、弾力が乏しい場合は回復が遅い。音については、太鼓を叩いたような音(鼓音)が健康な状態であり、高音や低音などは不健康な状態である。具体的に、高音の場合は炎症や粘膜の過緊張、低音の場合は消化管の弛緩、その他濁音や乾燥音、湿潤音や詰まった音などで便秘や下痢など様々な不調を把握できる。
 治療に関しては、全身の皮膚の過緊張が出ている所に接触鍼を行う。身体に異常が発生すると、内臓体壁反射により皮膚にその情報が投影される。刺激量の目安として、時間は年齢×1 分(5 歳位まで)。皮膚の柔らかい子は弱刺激、皮膚の固い子は強刺激とし、手の圧力やスピード、接触回数、接触距離で調整する。特に注意すべきはドーゼオーバーであり、小児の刺激量は思っているより少なくてよい。ドーゼオーバーの場合、症状の悪化や発熱、下痢や便秘、無気力や食欲低下などの反応が出る。そのような時は鍼灸師側も、施術部位の弛緩や、胃部の高音などの変化から予測が出来るので、保護者に前もって説明しておく。また初めから38℃以上の高熱がある場合は施術をせずに、小児科への受診を勧める。
 治療技術と並んで大切なことは、保護者への説明や説得であり、生活指導が必要なことも多い。その際に非常に配慮が必要であり、例えどのような子育てをしていたとしても、まずは母親を否定せず受け止めてあげることが大前提である。 子供をどうにかして良くしてあげたい、と思う母親の気持ちを理解し、それからアドバイスを行うと母子とのより良い信頼関係の構築に繋がる。
 未来ある子供達に小児はりを通じて自分の健康に関心を持たせ、さらに責任を持たせるように啓発できることは、非常に意義があることである。子供は素直で成長が早く、変化も出やすいことから小児はりの楽しさがあり、私達鍼灸師もその良さを知りどんどんチャレンジすべきである。村本先生の講義と実技を通じて、子供達への深い愛情と母親達への敬意を感じ、私達鍼灸師の役割はまだまだ大きいと、再認識させていただいた。
(研修委員 上田里実)

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