公益社団法人 大阪府鍼灸師会

素問・霊枢報告

霊枢勉強会報告 令和四年十一月

講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
日時 :令和四年(2022年)11月13日(日)第20回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:会員29名(うちWeb21名) 一般17名(うちWeb7名) 学生34名(うちWeb30名)
*11月度は会場22名、ネット配信での受講が58名でした。

○『黄帝内經靈樞』經脈第十


○はじめに

*『霊枢』のもっとも大きなテーマは経脈(けいみゃく)だと言われている。その点でも、本書の中でもっとも重要な篇だと言える。


*現在、経脈については、学校の鍼灸課程で習う。それゆえ経脈というものは、わかりきっているものかもしれない。しかし、これからこの篇を読むにあたってひとつ注意しておきたいことがある。

この篇に出ている経脈の学説には見落としやすいものが含まれている。
皆さんもよく話に聴くであろうが、経脈は一本一本ではない。「環(たまき)の端(はし)無きがごとし」と言われるように輪のようにつながっている。

ここに書かれている経脈の説というものは、表裏関係になっている。まず表と裏の経脈をならべ、その上で三陰三陽の同じものをならべている。たとえば、手の太陰の次に、その表裏関係にある手の陽明を置き、次いで同じ三陰三陽の陽明である足の陽明を置く、ということをしている。実はなかなか手のこんだ並べ方をしているのである。

このことは普通、あまり問題にされないと思う。経脈の説というものを見ていく上で重要なものは、まず表裏関係であろう。
手の太陰の経脈と手の陽明の経脈は表と裏の関係にある。手の太陰と手の陽明が絡脈を通じて、スイッチしていくと考えられている。もちろんこれは解剖学で取り扱うものとは、まったく異なるものである。それゆえ人体において経脈がスイッチしていくということは、解剖してもまったくわからない。ここで重要なことは表裏の関係があるということである。

そして、もう一つ経脈を考える上で重要なことがある。経脈の上に、五蔵の名前をくっつけたことである。たとえば「手の太陰」の経脈であれば、「肺(はい)」という五蔵の名前をつけてある。五蔵の名前がくっついているということは、ある時期に蔵府(ぞうふ)と経脈がくっつけられたということを表す、そのように考えて良い。


*「経脈篇」の中は、どのような構造になっているのか考えてみる。
ひとつは対になる経脈が、表裏という陰陽関係になっている。(**たとえば、手の太陰の脈と手の陽明の脈は裏と表の関係にある)

もうひとつは蔵府というものが経脈の上に乗せられることによって、五行的な関係というものが示唆されているということだ。
この二つは「經脈篇」を読む時に大きな枠として逃してはいけないものと思う。

*経脈は一本、一本単独なものではない。「經脈説」の記述の仕方の中に、それを織り込んでいる。そのように考えるべきものである。

*「経脈(けいみゃく)は実際どのようなものか」と私はそんなふうに発想をしない。「經脈の説」というものは、『霊枢(れいすう)』という本の「經脈 第十(經脈篇)」という篇の中に書かれることによって、はじめて私たちの目の前に登場する。解剖学では経脈は確認されない。そうであれば、経脈の存在というものは「經脈 第十(經脈篇)」の叙述の中にすべてある、と言って良い。

*「經脈 第十(經脈篇)」の内容について
わたしの理解では、経脈に「環(たまき)の端(はし)無きがごとし」という意味は、ひとつの経脈(けいみゃく)に施術をした時に、その全体に影響がおよぶ、ということを指す。どのつぼに鍼を刺してもその全体に影響がおよぶと言っても、私たち鍼灸の臨床に携わる者は100%どころか50%も、その影響の把握が出来ない、そんなことが多いと思う。


*ひとつの経脈に施術することが全体の経脈を動かすということである。それは経脈がつながっているということに象徴されている。
「いや、そうではないだろう。経脈はつながっていると認識されていて、それは紀元前後ごろの解剖学で確認されたのだ」という人もあろうか。しかし、そのようなことは無いのである。『霊枢』が著された当時も、二千年前も、現在も経脈(けいみゃく)というものは、モノとして確認はされていない。そうすると経脈が「環(たまき)の端無きがごとし」というのは、どの経脈を触っても、全体の経脈に必ず影響がおよぶのだと、そういうことを示しているのだと思う。
顕著に影響がおよぶ部分と顕著ではなく影響がおよぶ部分があるが、そのことの象徴が「環(たまき)の端無きがごとし」その言葉であろう。


*表裏関係の表と裏ということも、また重要である。たとえば「手の太陰(たいいん)」は「手の陽明(ようめい)」の経脈と、また「足の太陰(たいいん)」は「足の陽明(ようめい)」の経脈と裏と表の関係にある。対になるこれらの経脈はお互い影響をおよぼす顕著なものとしてあり、その象徴としての表裏の関係だとわたしは考えている。

*絡脈(らくみゃく)で他の経脈とつながっているということを目で確認することは出来ない。わたしは表裏関係ということや、絡脈でまとったり、つながったりという表現について、その対象となる二つの経脈が影響をおよぼす関係だと述べていると、そんなふうに理解している。

*五蔵というものは『霊枢(れいすう)』「經脈篇(けいみゃくへん)」で取り上げられるよりも、もっと古いものである。それよりも古い時代のものと思われる出土物の記述では経脈の名前の頭に蔵府の名前は冠せられてはいない。そうしてみると出土物の時代から『霊枢』「經脈篇」成立の時代までの期間に、蔵府の名前が経脈名の頭に冠せられたと考えられる。蔵府と経脈の関係性が深いということでそのようになったと考えるべきだ。それによって、どのようなことが起こるかと言うと、経脈というものが、たとえば「手の太陰(たいいん)」と「手の陽明(ようめい)」というような関係性だけではなくて、「肺(はい)」と「肝(かん)」の関係や「肝(かん)」と「脾(ひ)」の関係を否応(いやおう)なく想起させるもの、そんなふうに出来ていると考えざる得なくなる。これは世界が陰陽(いんよう)や五行(ごぎょう)で動いているのか?というふうな類(たぐい)のものではない。経脈が十一本、あるいは十二本のものとして出来た時、そのそれぞれの関係性抜きに経脈というものを考えられなかったということだ。

これから勉強する「經脈篇(けいみゃくへん)」は、皆さんが比較的によく知っている内容を勉強していくのであるが、実はそういうことが内部に含まれている、そのように考えるべきである。


(素問勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)

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