霊枢勉強会報告
報告『黄帝内經靈樞』五變(ごへん)第四十六 第三章
講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生日時 :令和八年(2026年)2月8日(日)第58回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:会場16名,WEB22名 計38名(内訳:大鍼会会員7名,準会員1名,日鍼会会員6名,全日学会員2名,学生5名,一般17名)
『黄帝内經靈樞』 五變(ごへん) 第四十六 第三章
○01 黄帝曰。 02 人之善消癉者。 03 何以候之。
01 黄帝(こうてい)曰(いわ)く、 02 人(ひと)の善(よ)く消癉(しょうたん)を病(や)む者(もの)は、 03 何(なに)を以(もっ)てか之(これ)を候(うかが)わん、 と。
(解説)
*02節の「消癉(しょうたん)」について馬玄臺(ばげんだい)という人はこのように言っている。
「 消癉者、 多飢渇而肉痩、 癉則内熱也。 」
【 消癉(しょうたん)とは、 飢渇(きかつ)多くして肉(にく)痩(や)せ、 やせれば則(すなわ)ち内熱(ないねつ)するなり。 】
*「飢渇(きかつ)」、つまり食物を食べたい、あるいは水を飲みたい、 そして食べたり飲んだりしても、からだがだんだん痩せてくる、 そういう状態がある時、からだの中では「内熱(ないねつ)」という状態が起っている。 おおむね、こんなことを言っていようか。
*澀江抽齋(しぶえ ちゅうさい)『靈樞講義(れいすうこうぎ)』には記述はないのだが、 張介賓(ちょうかいひん)という人は『類經(るいきょう)』十六卷「消癉詳義」を見よと言う。以下に記す。
「 愚按消癉消中者、 即後世所謂三消證也。 凡多飮而渇不止者爲上消、 消穀善饑者爲中消、 溲便頻而膏濁不禁者爲下消。 」
【 愚(ぐ)按(あん)ずるに消癉(しょうたん)、 消中(しょうちゅう)の者(もの)は、 即(すなわ)ち後世(こうせい)謂(い)う所(ところ)の三消(さんしょう)の證(しょう)なり。 凡(およ)そ多飮(たいん)にして渇(かつ)止(や)まざる者(もの)は上消(じょうしょう)と爲(な)す。 消穀善饑(しょうこくぜんき)なる者(もの)は中消(ちゅうしょう)と爲(な)す。 溲便(そうべん)頻(しき)りにして膏濁(こうだく)禁じざる者は下消(げしょう)と爲(な)す。 】
*『靈樞經校釋(れいすうきょうこうしゃく)』という本は「消癉(しょうたん)」についてこのように記している。
「“ 消癉” : 即消渇病。 消, 指津液消耗而痩, 癉, 指内熱, 消癉即指熱盛于内, 津液消灼而成的多飮多食及消痩的病症。 」
【 “消癉(しょうたん)” : 即(すなわ)ち消渇病(しょうかつびょう)である。 消(しょう), 津液(しんえき)消耗して、痩(や)せるものを指す。 癉(たん), 内熱(ないねつ)を指す。 消癉(しょうたん)とは即(すなわ)ち熱(ねつ)、内(うち)に盛んにして、 津液(しんえき)、消灼(しょうしゃく)して成るところの多飲多食及び消痩(しょうそう)の病症を指す。 】
○04 少兪荅曰。 05 五藏皆柔弱者。 06 善病消癉。
04 少兪(しょうゆ)荅(こた)えて曰(いわ)く、 05 五藏(ごぞう)皆(み)な柔弱(じゅうじゃく)なる者は、 06 善(よ)く消癉(しょうたん)を病む、 と。
(解説)
*「消癉(しょうたん)」は、 五藏(ごぞう)が柔弱(じゅうじゃく)という状態があるのだと言う。
*澀江抽齋(しぶえ ちゅうさい)という人は、04節についてこのような注を入れている。
『甲乙經(こういつきょう)』、 「少兪(しょうゆ)」を「岐伯(きはく)」に作る。
*09節では「少兪(しょうゆ)荅(こた)えて曰(いわ)く」となっているので、 この注は必ずしも、あてはまらない。
○07 黄帝曰。 08 何以知五藏之柔弱也。 09 少兪荅曰。 10 夫柔弱者。 11 必有剛強。
07 黄帝(こうてい)曰(いわ)く、 08 何(なに)を以(もっ)てか五藏(ごぞう)の柔弱(じゅうじゃく)を知らん、 と。 09 少兪(しょうゆ)荅(こた)えて曰(いわ)く、 10 夫(そ)れ柔弱(じゅうじゃく)なる者(もの)は、
11 必ず剛強(ごうきょう)有り。
(解説)
*五藏(ごぞう)が柔弱(じゅうじゃく)な人には、 剛強(ごうきょう)な状態があるのだと言っている。 剛強(ごうきょう)とは「強い」という意味である。
○12 剛強多怒。 13 柔者易傷也。
12 剛強(ごうきょう)は怒(いか)り多し。 13 柔(じゅう)なる者(もの)は傷(やぶ)れ易(やす)し、 と。
(解説)
*ここで剛強(ごうきょう)の人は怒りやすいと言っているが、 ここでは単に腹を立てやすい、 怒ってばかりいるというだけではなく、 元気が良いということもあるはずである。 ここで言う「怒り」というのは、感情的に怒るという意味ではなくて、 行動性があるということにも通じる。
*しかし、そのような人は「五藏(ごぞう)」が傷(やぶ)れやすいと言う。
*馬玄臺(ばげんだい)という人はこのように言っている。
「 此人者、 五藏柔弱、 心則剛強。 」
【 此(こ)の人は、 五藏(ごぞう)柔弱(じゅうじゃく)、 心(しん)則(すなわ)ち剛強(ごうきょう) 】
*ここでの「心(しん)」は五藏(ごぞう)に含まれるところの心(しん)ではない。 「心(こころ)」つまり精神的な状態を指す。
*高世栻(こうせいしょく)という人はこのように言っている。
「 謂五藏之精質柔弱而氣反剛強。 是柔者愈弱、 而剛者愈強、 剛柔之不和也。 」
【 五藏(ごぞう)之(こ)の精質(せいしつ)柔弱にして、氣(き)反(かえ)って剛強(ごうきょう)を謂(い)う。 是(こ)れ柔(じゅう)なる者は、 愈々(いよいよ)弱し。 剛(ごう)なる者は愈々(いよいよ)強し。 剛柔(ごうじゅう)の和(わ)せざるなり。 】
*張介賓(ちょうかいひん)は、このように言う。
「 性氣剛暴、 而肌肉弱者、 乃易於傷、 故善病消癉。 」
【 性氣(せいき)剛暴(ごうぼう)にして、 肌肉(きにく)弱き者は、 乃(すなわ)ち傷(やぶ)れ易い。 故(ゆえ)に善(よ)く消癉(しょうたん)を病(や)む。 】
*これをイメージしてみるに、 お相撲さんが筋肉もりもりで、 腕力もすごくあって、だけど肌肉(きにく)がやわらかいという感じであろうか。
*ここで剛強(ごうきょう)なのは、 心(こころ)の状態なのか、 あるいは肌肉(きにく)の状態なのか意見が分れるところである。
*12~13節を考えてみると行動性のある、積極性のある、そして体力の強い人は、 逆に五藏(ごぞう)というものが損傷しているのだという、 そんな見方であろう。
*『霊枢』の森を歩いてみませんか。 毎月休まず第二日曜午前10時から12時まで、大阪府鍼灸師会会館3階です。 勉強会の案内につきましては本会ホームページの「学術研修」の欄を選んでご確認下さい。
次回は 2026年4月12日(日) 『霊枢』「禁服 第四十八」 です。 会場、WEBでお待ちしています。 中国医学を自分の頭で考えてみる、 その土台づくりに適しているかと思います。
*2026年4月、新年度分より受講料が改定となります。 こちらも本会ホームページをご確認ください。 いくぶんか高くなりご負担を強いることとなります。 勉強会を推してくださる皆さまにプラス・アルファを持って帰って頂けますよう、 これからも励みます。
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(霊枢勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)
































