公益社団法人 大阪府鍼灸師会

霊枢勉強会報告

報告『黄帝内經靈樞』本藏(ほんぞう)第四十七 第四章

講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
日時 :令和八年(2026年)3月8日(日)第59回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:会場16名,WEB12名 計28名

○『黄帝内經靈樞』本藏(ほんぞう)第四十七 第四章

○01 肝小。  02 則藏安。  03 無脇下之病。

01 肝(かん)小(しょう)なれば、  02 則(すなわ)ち藏(ぞう)安(やす)く、  03 脇下(きょうか)の病(やまい)無し。
(解説)
*02節の「藏(ぞう)安(やす)く」というのは、 藏(ぞう)の状態が安定していることを言っている。

*03節の「脇下」は「きょうか」と読む。 「下」という字の読みかたは漢音は「か」、 呉音は「げ」となる。 色々な文献を見て「か」と読むこととした。 たとえば大塚敬節氏の『傷寒論(しょうかんろん)』の解説書などを見ても「きょうか」と読んでいるようである。 

○04 肝大。  05 則逼胃迫咽。  06 追咽則苦膈中且脇下痛。

04 肝(かん)大(だい)なれば、  05 則(すなわ)ち胃(い)に逼(せま)り、 咽(のど)に迫(せま)る。  06 咽(のど)に迫(せま)れば則(すなわ)ち膈中(かくちゅう)を苦しましめ、 且(か)つ脇下(きょうか)痛む。

(解説)
*ここでは肝(かん)が胃(い)に影響することを言っている。 ここで経絡治療を実践する人ならば、かならず五藏を五行的(ごぎょうてき)に考えようとする。 肝(かん)と胃(い)の関係を五行的(ごぎょうてき)に考えるのだと思う。 しかし、ここに記されているのは五行的なものではなくて、むしろ解剖学的なものに近いのではないかと思う。 しかしこの当時、 実際に解剖学が寄与したものはないように思う。 そういった点からは「肝(かん)」と「胃(い)」の関係は五行的な関係を何か示唆していると考えても、あながち間違いではないのかも知れない。

*06節の「膈中(かくちゅう)」は上焦(じょうしょう)と中焦(ちゅうしょう)の境である。

*肝(かん)の主な病證(びょうしょう)は脇(わき)の下が痛むということである。 そう言った関係でここに書かれているのだと思う。 そう考えると、解剖的な考え方で、この文章を理解することは間違っているように思う。

○07 肝高。  08 則上支賁切脇。  09 悗爲息賁。  10 肝下。  11 則逼胃。  12 脇下空。  13 脇下空。  14 則易受邪。

07 肝(かん)高ければ、  08 則(すなわ)ち上(かみ)、 賁(ほん)を支え、 脇(わき)に切(せっ)し、  09 悗して息賁(そくほん)を爲(な)す。  10 肝(かん)下(ひき)ければ、  11 則(すなわ)ち胃(い)に逼(せま)り、  12 脇下(きょうか)空(むな)し。  13 脇下(きょうか)空(むな)しければ、  14 則(すなわ)ち邪(じゃ)を受け易(やす)し。

(解説)
*ここも、 本当によくわからないところだ。 「わかった」と言えばうそになりそうなところである。

**09節の「悗せて」という部分は読み方がわからない。 張介賓(ちょうかいひん)という人は、この篇の「心(しん)」の章の注釈で、「悗、 悶也。(悗は悶なり)」と言っている。 「悶(もん)」という字の意味は、 身が悶(もだ)える、 ぼんやりする、 そんなことを指す。 ここでは、 江戸時代の送り仮名のままに「悗せて」としているが、 どのように読むのかはわからない。

*10節の「下(ひき)ければ」は江戸時代の当時は、このような読み方をしているので、そのまま使っている。 現在であれば「下(ひく)ければ」である。

*12節の「脇下(きょうか)空(むな)し」と言うのは、 脇(わき)の下、肋軟骨の下のところがやわらかいということである。

*13~14節は、 肝(かん)が下(ひき)ければ、 つまり「ひくい」場合は、 脇(わき)の下が痛むか、 邪(じゃ)を受けやすいということを言っている。

○15 肝堅。  16 則藏安難傷。  17 肝脆。  18 則善病消癉易傷。  19 肝端正。  20 則和利難傷。  21 肝偏傾。  22 則脇下痛也。

15 肝(かん)堅(かた)ければ、  16 則(すなわ)ち藏(ぞう)安くして傷(やぶ)れ難(がた)し。  17 肝(かん)脆(もろ)ければ、  18 則(すなわ)ち善(よ)く消癉(しょうたん)を病(や)みて傷(やぶ)れ易(やす)し。  19 肝(かん)端正(たんせい)なれば、  20 則(すなわ)ち和利(わり)して傷(やぶ)れ難(がた)し。  21 肝(かん)偏傾(へんけい)なれば、  22 則(すなわ)ち脇下(きょうか)痛む。

(解説)
*肝(かん)の病證(びょうしょう)は、何しろ「脇下(きょうか)痛む」ということがポイントとなる。 肺(はい)の病證(びょうしょう)が喘咳(ぜんがい)であるように、 肝(かん)の病證(びょうしょう)は脇下(きょうか)に出るということが特徴である。

*15~18節で「肝(かん)が堅(かた)い」というのは、 藏證(ぞうしょう)であって、解剖学的なものではないと考えるべきだと思う。 肝(かん)が「堅(かた)い」か「脆(もろ)い」か、つまり肝(かん)が健全か、もしくは健全でないかを分けて、 「脆(もろ)い」場合は、 まず「消癉(しょうたん)」という病(やまい)を考えている。

*19~21節では肝(かん)のかたちを問うている。 「端正(たんせい)」と「偏傾(へんけい)」の二つに分類している。 肝の病證(びょうしょう)の「脇下(きょうか)痛む」というものを、 肝(かん)が「端正」であるか「偏傾(へんけい)」であるかの中に位置づけしているのだと、 そういうふうに思う。

*張介賓(ちょうかいひん)という人は、このように言っている。
「 左右兩脇、 皆肝膽之經、 所以肝病者多見脇。 【 左右(さゆう)兩脇(りょうわき)、 皆(み)な肝膽(かんたん)の經(けい)、 ゆえに肝(かん)病(や)む者(もの)多く脇(わき)に見(あら)わる。】 」

*張介賓(ちょうかいひん)は経脈(けいみゃく)の流注(るちゅう)を引いて簡単に説明している。 しかし、わたしは流注(るちゅう)が関係するということではないように思う。 経脈の流注(るちゅう)ではなくて元々、肝(かん)の病(やまい)そのものが脇(わき)と関係しているように思う。


*『霊枢』の森を歩いてみませんか。 毎月休まず第二日曜午前10時から12時まで、大阪府鍼灸師会会館3階です。 勉強会の案内につきましては本会ホームページの「学術研修」の欄を選んでご確認下さい。
次回は 2026年5月10日(日) 『霊枢』「五色 第四十九」 です。 会場、WEBでお待ちしています。 中国医学を自分の頭で考えてみる、 その土台づくりに適しているかと思います。

*2026年4月、新年度分より受講料が改定となりました。
会員2,000円、 一般3,000円、 学生1,000円です。 前年度より1,000円ずつのご負担増、なんとも心苦しい限りですが、 ご海容のほど願います。 

(霊枢のテキスト〈日本内経医学会 発行,明刊無名氏本〉は在庫が無くなりました。ご購入を希望される方は日本内経医学会まで直接お問い合わせ願います。 「日本内経医学会」で検索したら「図書販売」のサイトが開けることを確認しておりますのでなにとぞ、よろしくお願いいたします。

(霊枢勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)

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