霊枢勉強会報告
報告『黄帝内經靈樞』禁服(きんぷく)第四十八 第八章
講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生日時 :令和八年(2026年)4月12日(日)第60回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:会場17名
○『黄帝内經靈樞』禁服(きんぷく)第四十八 第八章
○01 通其營輸。 02 乃可傳于大數。 03 大數曰。 04 盛則徒補之。 05 虚則徒補之。
01 其(そ)の營輸(えいゆ)に通(つう)ず。 02 乃(すなわ)ち大數(だいすう)を傳(つた)う可(べ)し。 03 大數(だいすう)に曰(いわ)く、 04 盛(さか)んなれば則(すなわ)ち徒(た)だ之(これ)を寫(しゃ)し、 05 虚(きょ)すれば則(すなわ)ち徒(た)だ之(これ)を補う。
(解説)
*01節の「營輸(えいゆ)」であるが、「營(えい)」は經脈(けいみゃく)を、 「輸(ゆ)」は經穴(けいけつ)のことだと解釈されている。 「營輸(えいゆ)」とは「經脈と經穴」ということである。 これに「通ず」ということであるから、 それを充分に理解している、 ということであろう。
*02節の「大數(だいすう)」というのは、 「大原則」ということである。 まず何しろ、 鍼灸は病態をつかむために、 あるいは対象とする經脈を選ぶために、 脈診の一つである人迎寸口診(じんげいすんこうしん)が必要だと言う。 その前提として「營輸(えいゆ)」、 つまり經脈(けいみゃく)とつぼに関しての理解を必要とする。 それがあれば「大數(だいすう)」、つまり大原則を使うことも出来ると言う。
*03~05節で「大數(だいすう)」とは何かを答えている。 つぼの位置を理解した上で、 特定のつぼに対して盛んであれば、これを寫(しゃ)し、 虚(きょ)していれば、 これを補う、 これが大數(だいすう)、大原則だと言う。
○06 緊則灸刺且飲藥。 07 陷下則徒灸之。 08 不盛不虚。 09 以經取之。 10 所謂經治者。 11 飲藥亦曰灸刺。 12 脈急則引。 13 脈大以弱。 14 則欲安靜。 15 用力無勞也。
06 緊(きん)なれば則(すなわ)ち灸(きゅう)刺して且(か)つ藥(くすり)を飮(の)ましむ。 07 陷下(かんげ)すれば則(すなわ)ち徒(た)だ之(これ)に灸(きゅう)す。 08 盛(さか)んならず虚(きょ)ならざれば、 09 經(けい)を以(もっ)て之(これ)を取る。 10 所謂(いわゆ)る經治(けいち)は、 11 藥(くすり)を飲(の)ましむ、 亦(ま)た灸刺(きゅうし)を曰(い)う。 12 脈(みゃく)急(きゅう)なれば則(すなわ)ち引く。 13 脈(みゃく)大(だい)にして以(もっ)て弱(じゃく)なれば、 14~15 則(すなわ)ち安靜(あんせい)にして、 力(ちから)を用いて勞(ろう)すること無からんことを欲(ほっ)す。
(解説)
*06節の「緊(きん)」の時には灸と鍼の後で、 藥(くすり)を飲むというのが特徴的である。 その理由は、よくわからない。
*10~11節で「經治(けいち)」、經脈(けいみゃく)の治療は、 藥(くすり)をのみ、 鍼も灸もすることだと言う。
*12節の「引く」というのは、導引(どういん)のことだと言われている。 『靈樞經校釋(れいすうきょうこうしゃく)』という本の下冊83ページに 脈急則引/「“引”: 導引的意思。」とある。
*13節の「脈(みゃく)大(だい)にして以(もっ)て弱(じゃく)」というのは陰虚(いんきょ)の状態をいう。
*14~15節は、 陰虚(いんきょ)の状態を念頭においた上で、 安靜(あんせい)にして、 力を用いて勞(ろう)すること無からんということが出て来るのだと思う。
*「脈が大(だい)」ということは、 脈が太いということと、 脈が浮いているという、 その二つが重なっていると思う。 脈が大(だい)にして、 以(もっ)て弱(じゃく)という脈の状態があるのだから、 わたしは大(だい)を実(じつ)と考えるのは違うと思う。 脈が「大(だい)」というのは、 脈の幅なのではないかと思うのだ。 「脈が大(だい)にして以(もっ)て弱(じゃく)」というのは、 脈の幅がひろくて弱いという状態を指すのだと思う。 その脈は浮(ふ)と沈(ちん)いずれかと言えば「浮いている脈」 に入るものだと思う。 脈の状態が「小(しょう)」であれば、 沈んでいて、 「大(だい)」であれば浮いていると考えている。
*14~15節で、 「則(すなわ)ち安靜(あんせい)にして、 力(ちから)を用いて勞(ろう)すること無からんことを欲(ほっ)す」 と言っている。 13節で言っているような、 幅が太くて、 弱(じゃく)つまり虚(きょ)した脈の状態の人、 そんな人であれば、 安靜(あんせい)にして、 力を用いるようなこと、つまり労働はしてもらいたくない、 そんなことを言っている。
○『黄帝内經靈樞』 禁服(きんぷく) 第四十八 おわりに
(解説)
*經脈(けいみゃく)と病態をどのように考えるかということが、 古い時代には、大きい問題として有った。 その一方、「蔵府(ぞうふ)」 というものが有った。 「蔵府(ぞうふ)の病(やまい)」 というものが片方にあり、 「經脈(けいみゃく)の病(やまい)」 というものが片方にあった。 その二つは後の時代にくっつくのである。 經脈(けいみゃく)には「長さ」がある。 經脈(けいみゃく)のA点からB点までは、 動脈が関係しているか否かは賛否が起きる。 經脈(けいみゃく)にはA点からB点までの、 はじまりから終わりというものが有って、 それは河の流れのようにイメージされている。 その河の流れみたいになっているところの途中の、 ある箇所の脈の状態をみて、 それの状態がわかる箇所があったということは確かに言えると思う。 ただ經脈(けいみゃく)は十一あるいは、十二本もある。 その中から病態を理解し、 それを解消するためにどのようにすれば良いのかということが古くからの問題であった。
*わたしは經脈(けいみゃく)というものの、 始めにあったのは流注(るちゅう)と經脈病證(けいみゃくびょうしょう)だったように思う。 流注(るちゅう)と經脈病證(けいみゃくびょうしょう)では、 間に合わないので 「人迎寸口診(じんげいすんこうしん)」 という対象とする經脈(けいみゃく)を選ぶための方法が出て来たのだろうと思う。 この篇の文章を見ていると、 人迎寸口診(じんげいすんこうしん)で經脈(けいみゃく)を選ぶだけではなくて、 脈状もみていることがわかる。
*『霊枢』の森を歩いてみませんか。 毎月休まず第二日曜午前10時から12時まで、大阪府鍼灸師会会館3階です。 勉強会の案内につきましては本会ホームページの「学術研修」の欄を選んでご確認下さい。
次回は 2026年6月14日(日) 『霊枢』「論勇 第五十」です。 会場、WEBでお待ちしています。 中国医学を自分の頭で考えてみる、 その土台づくりに適しているかと思います。
*2026年4月、新年度分より受講料が改定となりました。
会員2,000円、 一般3,000円、 学生1,000円です。 リモートが日常と化した昨今ではありますが、パソコンの画面越しにも、息づかいの聴こえる、 見つけることの多い勉強会だと思います。 なにとぞ応援のほどお願い致します。
(霊枢のテキスト〈日本内経医学会 発行,明刊無名氏本〉は在庫が無くなりました。ご購入を希望される方は日本内経医学会まで直接お問い合わせ願います。 「日本内経医学会」のホームページから購入可能です。
(霊枢勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)
































