霊枢勉強会報告
報告『黄帝内經靈樞』五色(ごしき)第四十九
講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生日時 :令和八年(2026年)5月10日(日)第61回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:会員・関係団体13名 ,一般16名 合計29名
○『黄帝内經靈樞』 五色(ごしき) 第四十九
*ここに出てくる文章は、『靈樞(れいすう)』「五閲五使(ごえつごし)」第三十七篇に出て来る文章と基本的に同じである。第三十七篇の「色診(しきしん)」を前提にして書かれているものと思う。「五閲五使」という篇では、「明堂(めいどう)」、これは鼻のことであるが、その部分を見ることによって診察が出来るのだと、書かれている。
*「五閲五使(ごえつごし)」第三十七篇の文章を以下に記す。
○22 帝曰。 23 善。 24 五色獨決于明堂乎。 25 歧伯曰。 26 五官已辨。 27 闕庭必張。 28 乃立明堂。 29 明堂廣大。 30 蕃蔽見外。 31 方壁高基。 32 引垂居外。 33 五色乃治。 34 平博廣大。 35 壽中百歳。 36 見此者。 37 刺之必已。 38 如是之人者。 39 血氣有餘。 40 肌肉堅緻。 41 故可苦已針。
*この文章の一部を読んでみよう。
○25 歧伯(きはく)曰(いわ)く、 26 五官(ごかん)已(すで)に辨(わ)かち、 27 闕庭(けつてい)必ず張り、 28 乃(すなわ)ち明堂(めいどう)を立つ。 29 明堂(めいどう)廣大(こうだい)に、 30 蕃蔽(はんへい)、 外(そと)に見(あらわ)れ、 31 方壁(ほうへき)高基(こうき)、 32 引き垂れて外(そと)に居(お)る。 33 五色(ごしき)乃(すなわ)ち治まり、 34 平博廣大(へいはくこうだい)なれば、 35 壽(じゅ)、 百歳なるに中(よろ)し。
○『黄帝内經靈樞』 五色(ごしき) 第四十九 第一章
○01 雷公問于黄帝曰。 02 五色獨決于明堂乎。 03 小子未知其所謂也。
01 雷公(らいこう)、 黄帝(こうてい)に問うて曰(いわ)く、 02 五色(ごしき)、 獨(ひと)り明堂(めいどう)に決するか。 03 小子(しょうし)、 未(いま)だ其(そ)の所謂(いわれ)を知らず、 と。
(解説)
*02節を訳すとこんな感じか。 「 五閲五使(ごえつごし)の篇に書かれているような、五色明堂論というもので、 本当に診察というものが出来るのでしょうか。 」
*03節の「小子(しょうし)」は、 雷公(らいこう)が自分のことを、へりくだってそのように称している。 「 私は、どういう意味で言っているのかわからない。 」と訳してみた。
○04 黄帝曰。 05 明堂者鼻也。 06 闕者眉閒也。 07 庭者顔也。 08 蕃者頰側也。 09 蔽者耳門也。 10 其閒欲方大。 11 去之十歩。 12 皆見于外。 13 如是者壽。 14 必中百歳。
04 黄帝(こうてい)の曰(いわ)く、 05 明堂(めいどう)は鼻なり。 06 闕(けつ)は眉閒(みけん)なり。 07 庭(てい)は顔(ひたい)なり。 08 蕃(ばん)は頬側(きょうそく)なり。 09 蔽(へい)は耳門(じもん)なり。 10~12 其(そ)の閒(あいだ)、 方大(ほうだい)にして、 之(これ)を去ること十歩(じゅっぽ)にして、 皆(み)な外(そと)に見(あら)われんことを欲(ほっ)す。 13 是(かく)の如(ごと)くなる者は壽(ことほ)ぎ、 14 必ず百歳に中(た)ゆ、 中(あた)る、 と。
(解説)
*05節の「明堂(めいどう)」というのは、 顔の真ん中に隆起する高いところ、 つまり「鼻」のことである。
*06節の「闕(けつ)」というのは眉間(みけん)、 眉と眉の間のことである。
*07節の「庭(てい)」は、 額(ひたい)を指す。
*08節の「蕃(ばん)」は、 顔の横側で、 その下側を指す。 その上側、 耳に近いほうは「蔽(へい)」という。
*10節の「方大(ほうだい)」、つまり端正で広く大きいという状態が良いのだと言っている。
*11節の「之(こ)れを去ること十歩(じゅっぽ)」、 ここでいう「一歩」は、 現在の二歩である。 右足と左足を踏み出して一歩というふうになる。 「十歩(じゅっぽ)」というのは、現在の二十歩となろうか。
*二十歩ぐらい離れたところ、 つまりある程度離れた距離から見て、 「皆(み)な外(そと)に見(あら)われんことを欲す。」 その状態がはっきりとわかる状態のものが良いのだと言う。
13節はそういう状態のものは、「壽(ことほ)ぐ」、つまり長生きができるのだと言っている。
*14節の「中」という字は、以前は「中(あたる)」と読んでいたのであるが、 『類經(るいきょう)』和刻本や『類經』本、また日本寛文三年本と比較して「中(た)ゆ」と読むこととした。 『黄帝内経大詞典(こうていだいけいだいしてん)』にも出て来るが、 「中」を「能」と解釈したものを採ったのであろう。 これを取って「たう」と読んでいるのだと思う。 ここでは「百歳までにも、 充分になることが出来る」 というような意味のことを言っている。
*馬玄臺(ばげんだい)は、このように言う。
「 此節大義、 與前五閲五使篇二節相同。 【 此(こ)の節(せつ)の大義(たいぎ)、 前(まえ)の五閲五使(ごえつごし)篇の二節と相(あい)同じ。 】 」
*張志聰(ちょうしそう)という人はこのように言う。
「 此承三十七章之五閲五使、 復辨明五藏之氣見色於明堂、 見脈於氣口。 察其色、 切其脈、 以知病之閒甚人之壽夭也。 」
【 此(こ)れ三十七章の五閲五使(ごえつごし)篇を承(うけたまわ)り、 復(ま)た五藏(ごぞう)の氣(き)、色(いろ)明堂(めいどう)に見(あらわれ)る、 脈(みゃく)氣口(きこう)に見(あらわれ)ることを辨(べん)ず。 其(そ)の色(いろ)を察し、 其(そ)の脈(みゃく)を切(せっ)し、 以(もっ)て病(やまい)の閒甚(かんじん)、人(ひと)の壽夭(じゅよう)を知る。 】
*「病(やまい)の閒甚(かんじん)」とは、病の軽重の意味である。 「人の壽夭(じゅよう)」とは、 人が長生き出来るか、否かということである。
*現在言うところの「顔面」は、 英語で言えば「face」 に当る。 しかし元々の「顔(がん)」という文字の意味は、現在のものとは異なる。 「顔(がん)」という文字の元々の意味は、 額(ひたい)のことである。 「額(ひたい)」は「庭(てい)」とも言う。
*眉閒(みけん)のことを「闕(けつ)」と言う。
*『霊枢』の森を歩いてみませんか。 毎月休まず第二日曜午前10時から12時まで、大阪府鍼灸師会会館3階です。 勉強会の案内につきましては本会ホームページの「学術研修」の欄を選んでご確認下さい。
次回は 2026年7月12日(日) 『霊枢』「背腧(はいゆ) 第五十一」「衞氣(えき)第五十二」の二篇です。 会場、WEBでお待ちしています。 中国医学を自分の頭で考えてみる、 その土台づくりに適しているかと思います。
*2026年4月、新年度分より受講料が改定となりました。
会員2,000円、 一般3,000円、 学生1,000円です。 学生の皆さん、ごめんなさい。 ご理解のほどよろしくお願いいたします。
○八月特別講義
8月9日(日)10~12時は、 一年に一度の八月特別講義です。 今年のテーマは、 「つぼの使い方」 つぼを使う人、 使わない人、 つぼに興味のある人すべてに聴いて欲しいです。 当日、大阪府鍼灸師会三階の会場へ直接来ていただいても良いし、 ご自宅のパソコンでも受講できます。 周囲の方々へのご宣伝も、 なにとぞよろしくお願いいたします。
(霊枢勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)
































