公益社団法人 大阪府鍼灸師会

霊枢勉強会報告

報告霊枢勉強会( 八月特別講義 )報告

講師 :日本鍼灸研究会代表 篠原 孝市 先生
日時 :令和八年(2026年)8月9日(日)第64回
会場 :大阪府鍼灸師会館 3階
出席者:会員・関係団体14名 ,一般17名 ,学生 1名  合計32名(会場16名,web16名)

○霊枢勉強会 八月特別講義 『 穴(つぼ)の選び方 -「臨床に活かす古典」補遺― 』


○江戸中期鍼灸書における病態理解と選穴

○『鍼灸則(しんきゅうそく)』 眩暈(めまい)
(頭注) 病因有四。  外邪、 七情、 腎虚、 血虚。  夫眩者言其黑、 暈者言其轉。  無痰不能作眩、 此痰在上火在下火炎上而動其痰。  鍼 中脘 三里 承山 内庭  灸 三里 隱白

*この文章を読んでみる。
「 病因に四(よ)つ有り。  外邪(がいじゃ)、 七情(しちじょう)、 腎虚(じんきょ)、 血虚(けっきょ)。  夫(そ)れ眩(げん)とは、其(そ)の黑(くろ)きを言う。  暈(うん)とは、其(そ)の轉(てん)じるを言う。  痰(たん)無くして眩(めまい)をなすこと能(あた)わず。  痰(たん)は上(うえ)に在(あ)り、火(か)は下(した)に在(あ)り。 火炎(かえん)上(のぼ)りて、其(そ)の痰(たん)を動かす。  鍼(はり) 中脘(ちゅうかん) 三里(さんり) 承山(しょうざん) 内庭(ないてい)  灸(きゅう) 三里(さんり) 隱白(いんぱく) 」

(解説)
*眩暈(めまい)には外邪があるということは書いてあるが、 その治療処置は示されていない。

*七情(しちじょう)は脾胃(ひい)に関係する部分でもある。

*腎虚(じんきょ)、血虚(けっきょ)の眩暈(めまい)は、 労倦(ろうけん)などの類であろうか。  それに対しここでは脾胃(ひい)を治療することを眼目としている。

*「眩(げん)とは、其(そ)の黑(くろ)きを言う」とは、 目の前が暗くなることを言っている。

*「暈(うん)とは、其(そ)の轉(てん)じるを言う」とは、 目の前が回ることを言っている。

*眩(めまい)の原因は「痰(たん)」なのだと言っている。  痰は脾胃(ひい)が故障した場合に起こる湿邪(しつじゃ)の一つである。

*『鍼灸則』で考えている眩暈(げんうん・めまい)の認識はこうである。  「痰(たん)」が原因で眩暈が起こる。 脾胃(ひい)の故障によって「痰(たん)」が産まれてくる。 ここで脾胃の故障であるが、これは食べ過ぎとかいうもので起ったものではなくて、 七情に因(よ)るものと考えていると思う。


*菅沼周圭(すがぬましゅうけい)の著した『鍼灸則(しんきゅうそく)』という本は、小馬鹿にして相手にされないこともままある。 しかしそれは良くないことだと思う。 この本を見ていると、この病気は、こんなふうに見ているのかと、そんなことがわかる。

○『鍼灸重宝記(しんきゅうちょうほうき)』 眩暈(げんうん・めまい)

諸(もろもろ)の眩暈(げんうん)はみな肝(かん)に属(ぞく)す、 風邪(ふうじゃ)上(のぼ)り攻(せめ)、 雍(ふさが)りて眩暈(げんうん)をなし、 あるひ(あるい)は氣虚(ききょ)、 失血(しっけつ)、 あるひ(あるい)は、 陰虚火動(いんきょかどう)、 みなよく此(こ)の證(しょう)をなす。  風眩(ふうげん)は浮(ふ)にして汗(あせ)あり、 痰(たん)は脈(みゃく)弦(げん)にして滑(かつ)なり。

鍼、 上星(じょうせい)、 風池(ふうち)、 天柱(てんちゅう)、 臨泣(りんきゅう)、 風府(ふうふ)、 陽谷(ようこく)、 中渚(ちゅうしょ)、 梁門(りょうもん)。   灸(きゅう)、 上星(じょうせい)、 顖会(しんえ)、 前頂(ぜんちょう)、 百会(ひゃくえ)、 風門(ふうもん)、 厥陰(けついん)。

(解説)
*「肝(かん)」のめまいに対して、 肺(はい)のめまいも脾(ひ)のめまいもある。 中心になる蔵(ぞう)は肝なのであるが、 肺が虚(きょ)して肝の氣(き)を巻き起こすということがある。 脾(ひ)が虚(きょ)して肝の氣(き)を巻き起こすこともある。 肝(かん)は関係しなくて、腎(じん)が影響するめまいもある。

*ここでは「眩暈(げんうん)は肝(かん)に属す」としか書かれていないが、 その機序には肺(はい)によるもの、あるいは脾(ひ)によるものもある。


*「風邪(ふうじゃ)上り(のぼ)攻(せ)め」というのは、 風(ふう)の氣(き)が障ってからだの上の方に上り、下(お)りて来ないというものである。 これも、めまいの原因になると言っている。

*「気虚(ききょ)」は、 脈が沈んでいる。 『鍼灸則(しんきゅうそく)』の「痰飮((たんいん)」によるめまいと同様なるものであろう。 

*失血により陰虚(いんきょ)となる。 これは腎虚(じんきょ)と同じである。

*「風眩(ふうげん)は浮(ふ)にして汗(あせ)あり」と言っている。 「風(ふう)」のからだに現れる特徴は、脈(みゃく)が浮いていて、汗をかくというものがある。 「風眩(ふうげん)」と書いているが、特別の意味があるわけでもない。 めまいがして、 なおかつ脈(みゃく)が浮いていて汗をかくものを「風眩(ふうげん)」と言っているだけである。 しかし「風眩(ふうげん)」は必ずしも外傷(がいしょう)とは限らない。 労倦症(ろうけんしょう)と言っているもの、それによっても起こる。  労倦(ろうけん)の人は「風眩(ふうげん)」のからだの状態と同じようになる。 これは、過労の果てに来た腎虚(じんきょ)がもたらすものである。  右手の脈が浮き、めまいを起こすと同時に汗が出てきて、 ものすごく排尿する。 尿を出せば出すほど楽になる症状である。


*鍼のつぼについて
上星(じょうせい), 風池(ふうち), 天柱(てんちゅう)は対症療法である。 からだの上のほうに来た「気」を下(くだ)す、 それを意図したものだろう。 

臨泣(りんきゅう,足臨泣), 中渚(ちゅうしょ), 陽谷(ようこく) これらの選穴は本治法(ほんちほう)と言うまでには至らないとは思う。 しかし良い選穴に思う。

風府(ふうふ)は上星(じょうせい)や風池(ふうち)と同じ意図を持った選穴であろうか。

梁門(りょうもん)というのは、ちょっと工夫がいる。


*灸(きゅう)のつぼについて
百会(ひゃくえ)や風門(ふうもん)に灸をすることに関して、本当に良いのかな、そういった疑問がある。 「風邪(ふうじゃ)上りて攻め、 雍(ふさが)りて眩暈(げんうん)をなす」、 つまり陰虚火動(いんきょかどう)のからだの状態の時に起こる眩暈(げんうん)などは、 百会(ひゃくえ)に灸(きゅう)をすると途端に悪化するように思う。 これは油断がならぬ。 


*主治というのは、今やって来たような感じで読んでいただきたい。 書いてあるとおりに読むのではなくて、紙背を読むということが必要になる。


*次回は 2026年10月11日(日) 逆順(ぎゃくじゅん)第五十五です。 いつものように当日の午前10時から12時まで開いております。 大阪府鍼灸師会三階の会場へ直接来ていただいても良いし、 ご自宅のパソコンでも受講できます。 周囲の方々へのご宣伝も、 なにとぞよろしくお願いいたします。 なおさらに学生の方々には聴いて欲しいと願っています。 

*2026年4月、新年度分より受講料が改定となりました。
会員2,000円、 一般3,000円、 学生1,000円です。 勉強会を続けるためにご理解いただきますよう、なにとぞ宜しくお願いいたします。

(霊枢勉強会世話人 東大阪地域 松本政己)

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